観光庁の発足に向けて、観光政策などについて産業界や有識者から意見を聞く国土交通省の「観光に関する懇談会」(座長=生田正治・商船三井相談役)の第2回会合が4月25日に開かれた。テーマは国際観光の振興、観光地づくり。メンバーからは、外客受け入れ態勢の充実、観光産業や地域づくりを担う人材育成の重要性などで施策の強化を求める声が出た。
国際観光の振興については、民間出身の文化庁長官、青木保氏が「21世紀のアジアの中で日本に求められているのは、徹底したクオリティの追求。観光もそうだ。例えば、本格的な長期滞在のリゾートが必要なのではないか」と指摘した。
また、外客受け入れの現状を踏まえ、由布院玉の湯社長の桑野和泉氏は「温泉地にいても、アジアの旅行者の急増などインバウンドの伸びを強く感じる。しかし、地域全体の受け入れ態勢が整っていない中で、リピーターになってもらえるか、不安だ。急病人が出た場合の医療機関の受け入れなどを含め、早急に対応が必要だ」と訴えた。
観光地づくりでは、観光にかかわる学校教育、人材育成の重要性を指摘する意見が相次いだ。景観や道路など環境整備に携わる関係者にも観光振興に対する共通認識が大切だとする声もあった。
その中で、金沢市長の山出保氏は「その土地の文化に触れたい、そうして人々が街を訪れるようになるのであって、金沢は『観光都市が目標では困る、それは結果でなければ』と言ってきた。極端な商業資本が入ると、大切なものが失われる心配がある。観光にかかわる人たちには、自制の論理がないといけない。広い意味での教育の充実が期待される」と語った。
前回の会合では「観光省」の提言も
観光に関する懇談会は、非公開で進める予定だったが、第2回会合から公開になった。生田座長は、第2回会合の冒頭、前回の内容として、「観光庁を作るなら、いずれは『観光省』にするくらいの意気込みとビジョンをしっかりと持つべきだ」との意見が、民間のメンバーから出たことを紹介した。
同時に、“タテ割り行政”をいましめる意見として、「観光庁が省庁間のヨコの連携を十分にとることができず、本来目的とする総合力を発揮できなければ、新しい庁ができてもまったく意味がない」などの指摘があったことも付け加えた。