宮崎県で広がる家畜伝染病、口蹄疫(こうていえき)問題が観光にまで飛び火しつつある。宿泊や宴会のキャンセル、イベントの延期・中止、観光施設の休園といった動きが出てきている。人への感染はないとされる口蹄疫だが、過剰に反応し、宮崎への旅行を控える一方、人がウイルスを運ぶ媒介となる恐れがあるため、予防措置として動物との接触を制限する施設も見られるからだ。「影響が確実に出ている。1日も早い終息宣言を願うばかりだ」と観光関係者は力を込める。
5月18日、東国原英夫知事は非常事態宣言を発令。みやざき観光コンベンション協会はホームページ上で「観光等でご来県のみなさまへも、車の消毒や空港等での消毒マットによる靴底の消毒や手洗い、うがいの励行にご理解とご協力をお願いいたします」という文章を掲載した。
「肌感覚だが、観光面への影響は確かにある」と同協会。県の観光推進課も「イベントの取りやめや、旅館・ホテルから予約が入って来ないという声を聞いている」と認める。
宮崎市ホテル旅館組合によると、宣言以後、6日間の宿泊キャンセル人数は市内のホテル16軒だけで1万人を超えた。「その後も猛烈な勢いでキャンセルが続き、予約はほとんどない状態」と冨森信作組合長はいう。
同22日、宮崎市で開催予定だった食のイベント「街市」の中止が決定。23日にはテーマパーク、サンメッセ日南が入園制限に踏み切った。国内外の団体客(15人以上)が対象。このほか、同市のフェニックス自然動物園、小林市のコスモス牧場なども休園。期間はいずれも「当面の間」とし、再開の見通しは立っていない。
現段階で終息の見通しはたっておらず、観光関係者の不安は募る一方だが、「宮崎に来ていただいているお客さまに対して心からの感謝とおもてなしをすることこそが今は大切」と冨森組合長は強調する。
全日本空輸(ANA)は5月20日、日本航空(JAL)は同21日、それぞれのHP上で、宮崎空港発着の国内航空券について、特別対応をとることを発表。同21日までに発券された6月18日搭乗分の航空券の払い戻しや同一区間での別便への変更を手数料なしで受け付けることとした。両社によると、払い戻しや変更の申し込みの動きは見られるものの、いずれも件数は少ないという。
JALツアーズによると、同社が取り扱う宮崎発着の旅行について、同26日時点で、個人型旅行で約80人、団体型旅行で約180人のキャンセルが発生。「個人型は宮崎発、団体型は宮崎着でキャンセルが多い」(マーケティング室)。
ある旅行会社が取り扱う県内の学校の修学旅行は、北海道での牧場体験などを含むことから、口蹄疫の感染拡大を懸念して延期に。「日帰りや1泊での研修旅行や遠足なども含めれば、取り扱い延期や中止は把握しきれない」と困惑を隠さない。風評被害の拡大も懸念する。
7月3〜5日に宮崎市で開催される世界的なフラダンス大会「モク・オ・ケアヴァ・インターナショナル・フェスティバル」の日本大会を取り扱うKNT。同社は宮崎発着の旅行キャンセルでは大きな影響は受けていないものの、大規模なフラダンス大会を控え、今後の動向を注視する。