東北の復興支援へ桜を題材に観光客を誘致しようと、行政や観光業界、信用金庫業界が東北・夢の桜街道推進協議会(細野助博会長)を官民55会員で設立し、東北の桜の名所88カ所を巡る「桜の札所・八十八カ所巡り」プロジェクトを推進する「東北・桜サミット」が10月27日、山形県の南陽市文化会館で開かれ、約700人が参加した。
サミットでは春の「東北・夢の桜街道」に、新たに東北の酒蔵80カ所をつなぐ秋の「東北・酒蔵街道」が発表された。今後、夏の「東北祭り街道」、冬の「東北雪見街道」の東北観光周遊ルート四季感動の「東北住環道」の整備を視野に、東北6県の復興創生への取り組みを目指すことを確認した。
主催者を代表し、細野会長は「東日本大震災から4年が経過し風化が進み、東北への復興支援が薄れてきているが、夢の桜街道の情報発信を強化し、旅を創出し東北の復興と創生により発展することを願う」とあいさつした。吉村美栄子・山形県知事、白岩孝夫・南陽市長が歓迎のあいさつをした。
サミットの1部では、イギリス人の女性監督ルーシー・ウォーカー氏が震災直後の被災地に入って撮影した、短編ドキメンタリー映画「津波そして桜」を上映。厳しい環境の中でも、春の訪れとともに咲き誇る桜の姿に人々が癒され、励まされる過程や、被災地の再生を誓い共生する大切さを訴えた。
2部では、パネリストに加藤庸之・観光庁観光地域振興部長をはじめ東北6県の副知事、部局長らによるシンポジウムを開催した。
パネリストを務めた加藤部長は「観光は経済面のみならず、広域観光交流が果たす復興の役割は大きい」、高坂幹・青森県観光国際戦略局長は「民間主導で東北全体の観光振興を盛り上げる協議会が立ち上った意義は大きく、地酒と料理のマリアージュを検討したい」、齋藤敦夫・岩手県企画理事は「桜と八幡平の雪の回廊の同時見学の商品を造成し発信。震災後に植栽した1万7千本の桜が10年後の復興ツーリズムの財産となる」と述べた。
中島英史・秋田県副知事は「東北は夏祭りが最高のコンテンツ。従来型の観光は限界にきている。テーマを決め体験を通しての観光商品の造成が急務だ」、吉田祐幸・宮城県商工観光部長は「来年の仙台空港の民営化後には乗降客数は600万人を目標に掲げている。これが東北全体の観光の起爆剤になることを期待している」、小野真哉・山形県観光交流局長は「観光には県民総参加、全産業参加で取り組んできた。東北全体が桜を目玉に連携し、観光振興を図った意義は大きい」、橋本明良・福島県観光交流局長は「桜の札所の1番は三春の滝桜。復興ツーリズムの単独開催は難しく連携が大切だ。福島の再生なくして復興はありえない」などと指摘した。
コーディネーターを務めた細野氏が「民から始まったが、官を巻き込み四季を通した誘客を推進し、東北の魅力を発信することが重要だ」と意見を集約。今後、広域連携のベースを早急に整備することを確認した。
シンポジウムの様子