体験型観光に積極的に取り組み、成果を上げている地域の事例や課題を議論する第13回「全国ほんもの体験フォーラムin福島・南会津」が10月28~30日、福島県南会津町の「御蔵入交流館文化ホール」をメイン会場に開かれた。
フォーラムの開催地域は、南会津町、下郷町、只見町、桧枝岐村の4町村。農村生活体験をはじめ、地域の資源を生かしたブナの森トレッキングなどの自然体験プログラム、郷土料理作りや工芸などの体験メニューを数多く取りそろえた地域。
主催は、全国ほんもの体験フォーラムin福島・南会津実行委員会と自治総合センター。共催が全国ほんもの体験ネットワーク。28日の全体フォーラムには、県内外から受け地関係者や旅行会社ら約800人が参加。期間中は、全体フォーラムに加え、29日に課題別研究分科会を、29、30日に体験ツアーを催した。
全体フォーラムは、事例発表や公開パネルディスカッションなどを開催。冒頭、実行委員長の大宅宗吉南会津町長らがあいさつした。
公開パネルディスカッションでは、「平和学習」について、「(被爆地の長崎では)実体験をした語り部がいなくなる日が目の前に迫っている」(明石克磨・長崎県五島振興局地域づくり推進課長)といった語り部の減少を危惧する声があった。一方で、「平和学習の世代交代はほぼ終わった。若い人が代わって講話をしている」(加蘭明宏・沖縄体験ニライカナイ代表)といった声も。世代交代による影響はないという。
東日本大震災による津波の被害を受けた岩手県田野畑村では、「大津波語り部&ガイド」をプログラム化。2013年は6千人の利用があったが、「今年はその10分の1の利用に激減した。のど元過ぎれば熱さを忘れる、ではないが大変危惧している。コーディネートする側もやり方を変えるなどし、レベルアップする必要がある」(渡辺謙克・田野畑村政策推進課主幹)などと述べた。
29日の課題別研究分科会は4町村でそれぞれのテーマで開いた。合計で約500人が参加した。
南会津町で開かれた第1分科会では、民泊の教育効果などについて意見が交わされたが、「民泊の受け入れ農家の第1世代の年齢が70代後半から80代になっている」(馬場一久・南会津農村生活体験推進協議会副会長)と、民泊農家の減少を指摘。一方で、「(教育旅行の先進地である)長野県南信州では20代、30代の若い世代の担い手が出ている。昔から受け入れているので抵抗感がない」(鈴木守・JTBコーポレートセールスマーケティング部法人営業課営業推進担当マネージャー)という報告もあった。
フォーラムの受け入れにあたった南会津農村生活体験推進協議会の湯田弘信事務局長は、「東日本大震災の原発事故による風評被害により、その前年に23校あった教育旅行がほぼゼロになった。今年は7校を受け入れたが、フォーラム開催をきっかけに風評被害の払拭を促進し、教育旅行の回復を図りたい」と話している。