日本政策金融公庫はこのほど、全国の中小企業を対象に、新事業への取り組みに関する調査結果を発表した。それによると、最近5年間で新事業に取り組んでいる中小企業は22.8%で、新事業に取り組んでいない企業よりも売り上げや従業員数が増加傾向であることが分かった。ただ、新事業に取り組む上で「特に問題点はない」とする企業は15.0%にとどまり、解決すべき課題も多い。
新事業への取り組み状況を業種別にみると、製造業で23.5%、非製造業で22.2%がすでに取り組んでいると回答した。業種を詳しくみると、情報通信業(41.3%)、電気機械(35.8%)、電子部品.デバイス(28.8%)、はん用機械(28.4%)、プラスチック製品(27.2%)—などが上位にあがっている。
新事業の業種は、製造業が42.7%、非製造業が51.1%。ほかに、農林水産業2.7%、その他3.5%となっている。非製造業の中では、サービス業が14.7%で最も多く、小売業9.5%、卸売業7.7%などが続いている。
既存の業種と新事業の組み合わせを細かくみると、同じ業種内での進出が多い。製造業のうち、製造業に進出した企業の割合は77.1%。同様に、非製造業のうち、非製造業に進出した企業の割合が78.7%と、ともに約8割を占めている。
新事業に取り組んだ動機(三つまで複数回答)は、「適当な進出分野が見つかったため」が50.1%と最も多く、次いで「これまでにない画期的なビジネスチャンスが見つかったため」(33.0%)、「顧客や取引先の要請」(32.2%)、「地域社会に貢献するため」(25.3%)などが続いている。
最近の自社の業績が5年前と比較してどうなったかを聞くと、新事業に取り組んでいる企業では、売り上げが「増加した」と回答した企業が44.9%で、「減少した」の40.0%を上回った。「増加した」とする割合は、新事業に取り組んでいない企業の32.2%を大きく上回っている。
従業員数でも、新事業に取り組んでいる企業では「増加した」が43.0%と、「減少した」の28.6%を上回った。「増加した」割合は、新事業に取り組んでいない企業の28.5%も大きく上回っている。
新事業の問題点は(三つまでの複数回答)、「質的な人材の確保が難しい」(37.6%)、「製品.サービスの開発に必要な専門知識.ノウハウの不足」(37.1%)、「販売先や受注先の確保が難しい」(36.5%)、「既存の従業員の再教育が難しい」(15.8%)など。「特に問題点はない」は15.0%にとどまった。
調査は9月中旬から下旬、同公庫取引先の中小企業1万3119社に行い、5683社から有効回答を得た。