全国修学旅行研究協会(全修協、岩瀬正司理事長)は7月30日、東京のホテルグランドヒル市ケ谷で第30回全国修学旅行研究大会(文部科学省、観光庁、近畿日本ツーリスト協定旅館ホテル連盟、観光経済新聞社など後援)を開いた。「被災地への修学旅行」「被災地からの修学旅行」と題して、中学校2校がそれぞれの修学旅行の実施事例を発表。元観光庁長官の溝畑宏氏が「日本を元気に、地域を元気に」と題して講演した。
被災地への修学旅行として、東京都目黒区立東山中学校の牛島正廣前校長らが、宮城県気仙沼市の大島を訪れた旅行の事例を発表した。
同校は2006年から大島での修学旅行(翌年から自然宿泊体験学習)を実施。東日本大震災の影響で2011年は中止を余儀なくされたが、翌2012年、当時の校長らの実地調査を踏まえて旅行の再開を決断した。
旅行では浜の清掃活動や地引網体験、カキの養殖体験を行ったほか、震災で被害を受けた地元住民から当時の苦労話や復興に向けた取り組みの話を聞いた。
教諭らは「震災の爪あとがいまだ残る場所をあえて見せることで、子どもたちに何かを感じてもらいたかった」と説明。「多感な時期にこうした体験ができたことは、将来をいかに生きるかを考える上で、いい機会になったのではないか」と述べた。
また被災地からの修学旅行として、宮城県東松島市立鳴瀬未来中学校の高橋裕子校長らが、北海道への修学旅行の事例を発表した。
同校は鳴瀬第一中学校と鳴瀬第二中学校が統合して今年4月に開校。旧鳴瀬二中は津波で壊滅的な打撃を受け、鳴瀬一中に間借りして2年間授業を行ってきたが、今年閉校、統合を余儀なくされた。ただ、修学旅行は「鳴瀬二中最後の修学旅行」として、例年5月に行う旅行を3月に前倒しして、統合前に行うことにした。
北海道は、震災で多くの支援が寄せられたことから、「恩返しをしたい」「困難を克服した元気な姿をみせたい」と、実施場所に決定。札幌、小樽での観光ほか、登別で地元住民との交流会を行い、地域に伝わる太鼓や踊りを披露。訪れた350人以上の市民らを楽しませた。校長らは「たくさんの温かなご支援をいただき、一生の思い出となる感動的な修学旅行となった」と述べた。
大会ではこのほか、全修協提案として、協会の山本精五部長が「学びの集大成を図る修学旅行」と題して発表。元観光庁長官で、京都大学経営管理大学院特命教授の溝畑宏氏が「日本を元気に、地域を元気に」と題して講演し、自らの経験を踏まえて人材育成の大切さや観光立国の重要性を説いた。
目黒区立東山中学校の事例発表