政府の補正予算として編成された国の地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)。観光需要の拡大に活用でき、地方自治体の「ふるさと旅行券」の発行が話題だ。単にプレミアムを付けた宿泊券の発行だけではなく、地域の観光の現状や戦略に沿って、ひと工夫加えた活用策も打ち出されている。香川県、北海道、栃木県の事例を紹介する。
事業効果の持続に期待
香川県は6月から、「せとうちアートにふれる女子旅プレミアムクーポン」事業を展開している。アートに関心を持つ女性をターゲットに、認定した旅行会社の旅行商品の利用にクーポンを提供して参加者の費用を割り引く。
県内にだけ宿泊する旅行商品で、出発地は関東、東北、新潟、北海道の16都道県に限定した。クーポン1枚で8千円割り引く。2万泊分を発行。クーポンは1泊する商品で1枚、2泊する商品で2枚、3泊以上する商品で3枚使用できる。
クーポン事業は、効果が拡大、持続し、終了後も誘客につながるように組み立てた。香川県交流推進部観光振興課の加藤敬課長補佐は「一般に女性は情報発信力が高い。口コミやSNS(ソーシャルメディア)を使った拡散効果に期待している。アートをテーマにしたのは、来年の瀬戸内国際芸術祭などの集客につなげる狙いがある。旅行商品を対象にしたことで、旅行会社の商品造成も促進できる」と話す。
特設サイトを立ち上げて対象の旅行商品を紹介し、各旅行会社のホームページから予約できるようにしている。16日現在で8社10商品が掲載されている。期間は来年1月31日までで、掲載商品は順次増やす。
旅行消費を全域に波及
北海道は、道民の道内観光の需要を喚起する旅行券事業、道外、海外からの旅行者を対象にした旅行券事業、バスツアーの支援事業などを計画している。発売時期、発行部数などは調整中だが、使用期間は閑散期である9月から来年2月に設定している。
事業展開について北海道経済部観光局国内誘客グループの新田清文氏は「北海道全域で観光消費を増やし、経済効果を行き渡らせることと、閑散期の需要喚起が狙い」と説明する。
閑散期の観光客の8割以上を占める道民向けには「道産子旅券」を発行する。札幌市内を除く宿泊・観光施設で使用できる額面1万円の旅行券を8千円で販売する。
道外客の誘客には、プレミアム付き旅行券の発行や旅行会社への助成を行う。国内客向けの旅行券は、新千歳以外の道内空港の利用が条件。外国人向けは、札幌市以外の免税店、観光施設で利用できる旅行券を検討。旅行会社向けには、旅行商品やバスツアーの販売拡大につながる助成を行う予定。
宿泊・日帰り外客も拡大
栃木県は、消費者に対するプレミアム付き宿泊券の販売などとともに、旅行商品を対象にした施策として旅行会社とツアー参加者への助成を実施する。インバウンド振興にも交付金を充て、重点市場である台湾からの旅行に助成を行う。
登録宿泊施設で使える額面1万円の宿泊旅行券を5千円で販売。6、9月の2期に分けて抽選で販売する。県が昨年4月から発行している特典・スタンプラリー付きの周遊パスポートを併せて提供し、県内の周遊を促す。このほか宿泊予約サイトで宿泊割引クーポンの提供を7月に始める。
県外を発地として県内に宿泊する旅行商品への助成は、旅行会社にインセンティブとして参加者1人当たり千円を助成するほか、参加者の費用を5千円割り引く。栃木県は東京などからの日帰り旅行も多いことから、日帰りバスツアーの需要喚起に向けて旅行会社にバス1台当たり5万円を助成し、参加者の費用を2500円割り引く。誘客目標は5千人、バス200台。
台湾向けの助成制度は11月ごろの開始を予定。栃木県の昨年の外国人宿泊者数約15万人のうち台湾は約3万人で最多の市場。来県を促し滞在日数を増やすため、旅行会社への宿泊数当たりの助成と、旅行者の費用の割り引きを実施する予定。誘客目標は千人を設定している。
香川県の女子旅プレミアムクーポンの特設サイト