【道標 経営のヒント 328】建築が大変なことになっています 佐々山 茂


 ダウンライトが品薄でメーカーを変え、それでも納期待ちで竣工が遅れ、ウォッシュレットも先行発注して確保し、湯沸器の納期に合わせて工事工程を決めるなど、世界的な「半導体ショック」が建築の現場にさまざまな影響を及ぼしています。

 木造でレストランを増築中ですが、アメリカに端を発した「ウッドショック」でこの1年に木材価格が70%程度値上がりして契約時の工務店との金額交渉が難航しましたが、契約後に起きたロシアのウクライナ侵攻でロシアからの木材輸入が制限された影響か、着工後にも木材価格が目に見えて上昇し、工務店から値上げを迫られています。

 コロナ禍で東南アジアからの輸入丸太の供給が追い付かないことが主な原因で、建材に欠かせない合板が不足し、価格が高騰する「合板ショック」も起きています。

 鉄骨や鉄筋の価格が5年前と比べると5割程度上がる「アイアンショック」が起き、労務費も20%程度上がり、働き方改革で経費も上昇し、数年前と比べて建設費が高騰している状況です。

 ロシアは木材、天然ガス、石油の輸出大国で、同国からの輸入制限による原料やエネルギーの影響はこれから建設コストに跳ね返ると思われ、建設費の超高騰時代に入るといわれています。

 先日、30年以上親しくしているゼネコンの方が、鉄骨の納期が1年で、価格も高騰していて受注もリスクが伴うと嘆いていました。仲間のデザイナーも事前に取った概算見積もりから大幅に増えて、クライアントを説得するのに難儀していると話しています。円安の影響で輸入建材の値上がりも予想され、予算や工期の設定に頭を悩ませています。

 手元にある1991年の旅館の建設計画書を見ると、ちょうどバブルの頃で建設坪単価が110万円で、今それを造ると180万円はかかると思いますが、お客さま1人当たりの宿泊消費単価は当時と変わらず、定員は10帖5名で計算していたのが今は個人客で1室2・5人に半減しているのが実状です。採算を合わせるには消費単価を倍にして稼働率を上げる必要に迫られます。

 これからはストックの活用が重要で、私の事務所ではコンクリート強度を調査して、必要なら耐震補強をし、設備改修をインテリア改修に合わせて行うことで経営の継続性を目指しています。そして新築時や改修時の新しい価値が消費されることのない持続可能な建築、周りの景観に呼応する建築やインテリアの姿を求めています。

 
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