【道標 経営のヒント 296】老人介護施設のサービスとホスピタリティ 佐々山 茂


 96歳の母が先月有料介護老人ホームに入所しましたが、施設を決めるのに介護施設のコンサルタントに相談し、家から近い3施設を見学しました。

 1軒目は人がいないかと思うほど静かでしたが、清掃も行き届き印象は良かったです。2軒目はそこから車で10分ほどにあり、建物は少し古いのですが、周りに武蔵野を感じさせる畑がまだ残っていました。玄関で体温を測り、手を消毒し、名前を書いていると、元気に人が動く気配がし、笑い声が聞こえてきました。

 1軒目より部屋数は少ないのですが、明るく元気な雰囲気が伝わってきました。コロナ禍で面会の人も入れないのですが、見学ということでリビングルーム兼食堂に案内されると、自分の居場所があるのか、皆さん思い思いの場所でにこやかに座り、「自宅のような心地よさ」を目指しているのが分かりました。

 空室になっている食堂から二つ目の東向きの部屋に通されると、目の前に畑の景色が広がり、ここなら母も居心地が良いと感じました。お会いする皆さんがにこやかだし、部屋も明るく、見学がもう1軒残っていましたがその場で決めました。

 契約のときに、入居人数3に対して常勤の介護職員が1という3対1の人員配置が介護保険法で決められ、その人数にはホーム長、清掃、調理の人数は含まれないことを知りました。朝の着替え、トイレ、食事から始まり、就寝するまで生活全般を切れ目なく見守り、夜間は見回り、トイレの世話などで3名ほどが夜勤になると説明がありました。

 決められた人数で365日24時間入居者のお世話をするのですが、社員の休日や急な休みもあり、その労務管理のスケジュールを組むのが大変だそうです。日常的に必要とされるサービスをきちんとしながら、入居者に居心地の良い場を提供することに一番気を使っていると話していました。

 宿泊施設と同じで、顕在化しているサービスは必要条件で、十分条件としての潜在的なニーズに応えるホスピタリティを大切にしていました。

 見学した1軒目のサービス内容は良いのですが、ホスピタリティの部分に不安を感じ、後で見学した3軒目は新築で開業前のためホスピタリティの部分が見えませんでした。

 平成28年度に当時の安倍首相が始めた生産性向上国民運動で介護施設が人の動きを細かく分析して効率化を目指していましたが、ホスピタリティには触れていませんでした。これからは宿泊施設もホスピタリティの質が問われる世の中になりそうです。

 
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