政府は「骨太の方針2018」を掲げ、現行の「専門的・技術的な外国人材」の受け入れ制度を拡充し、「一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材」の就労を目的とした新たな在留資格の創設を打ち出した。
受け入れ業種の考え方としては、「生産性向上や国内人材の確保のための取り組み(女性・高齢者の就労促進、人手不足を踏まえた処遇の改善等)を行ってもなお、当該業種の存続・発展のために外国人材の受け入れが必要と認められる業種において行う」としており、人手不足に悩む宿泊業界では、ようやく救いの手が差し伸べられた感がある。
しかし、事はそう簡単には進まない。そもそも受け入れのための条件としてあげられている、一定の専門性・技能を有しているかどうかをどのように評価していくのか。政府は「外国人材に求める技能水準とは、受け入れ業種で適切に働くために必要な知識および技能とし、業所管省庁が定める試験等によって確認する」としているがそのような公的な資格試験は、本業界にはまだない。そこで、宿泊業4団体(日本旅館協会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟)は、特定技能を認定する試験の運営態勢等を担う「一般社団法人宿泊技能試験センター」を共同で設立した。
就労目的で認定される「特定技能実習」は、国際協力を目的とする「技能実習」とは異なり、学歴や経験は問わないものの「適切に働くために必要な知識および技能」は受け入れ業界が策定することになっている。
ただ、技能実習計画の認定基準を技能実習法に則って定められる場合、同法には「修得等をさせる技能が技能実習生の本国において習得等が困難な技能等であること」(法第9条)という条件があり、自分の国で学べることは日本で実習する必要がないとされている。
特定技能実習計画も同法に則って策定されるのだが、仮に、特定技能としてホテルのベッドメイキングを挙げた場合、日本以外の国でも学べるので特定技能には該当しないという判定もあり得る。ホテル業務の中で特定技能に該当する仕事を見つけるのは難しい。
一方、旅館には、特定技能として認められる業務は少なくない。例えば、客室や館内に花を生けたり、季節ごとに軸や設(しつら)えを変えたりといった業務には日本旅館ならではの高いセンスと技能が求められる。しかし、従業員の中には「花を生けるのは女将の仕事。日本人の私たちでも難しいのに外国人にさせるのはムリ」と端から業務を放棄している者もいる。外国人労働者を単なる労働力ではなく「特定技能」を有した働き手として育てるとともに働く仲間にしていくためには、前述のような日本人従業員の意識改革も不可欠である。
人的サービスを主力商品とする旅館業界と、生産性向上の取り組みやロボットの導入が急速に進むホテル業界。両者を一括りにして「特定技能」を設定していくことは容易ではないが、世の中の大きなうねりに取り残されることなく「宿泊技能試験」が軌道に乗ることを切に願いたい。