【道標 経営のヒント 140】「もったいない」から生産性向上 佐々山茂


 平成29年度の補正予算で観光庁の生産性向上推進事業を1月末から3月末までの2カ月間で行った。技術的調査、課題抽出、対策提言を国際観光施設協会のエコ・小委員5名で福島県、千葉県、熊本県の小規模、中規模、大規模の4モデル旅館で取り組んだ。報告書は80ページあり、その中からもったいないと感じたこと3点を紹介する。

 (1)プロパンガスは一番高い施設468円/立方メートルに対し、安い施設は144円/立方メートルと3・25倍の開きがあった。プロパンガスは公共料金ではなく市場価格で地域によって差があるが400円を超えるのは売る方も買う方も問題がある。今回値段交渉をしたらすぐに280円まで下がった。

 A重油は高値60円と安値45円と値幅が小さいのに比べ、この価格差は異常といえる。同じ熱量で比較するとA重油60円/リットルに対しプロパンガスは2・5倍の150円/立方メートルで釣り合う。せめてA重油価格の3倍の180円/立方メートルまでとしたい。

 あまり高い場合はガス利用の多い厨房は電化するのが一つの方法。いくらで買っているか調べ、一度複数業者と価格交渉することをお勧めする。(数字は昨年度の価格)

 (2)食器洗浄作業を実測した。1軒目は担当者が出勤した18時30分に食器洗浄機のスイッチを入れ23時まで4・5時間ほとんど連続運転。その上、漬け洗いでなく流水で前洗いして、お湯と水を大量に浪費していた。その日の宿泊客は82名で1食当たりに掛かった時間は7・5人・分/食で、お湯は85リットル/食。食器がない状態で食器洗浄機が空回りしていても電気、給湯、洗剤は消費することを理解していない。

 2軒目では下膳された食器を2カ所のシンクに移動して、流水で前洗いしてから食器洗浄機に投入。作業動線が悪く、重たい食器を何度も移動しており、2基の食器洗浄機は仕上げに使っている状態。1食当たりに掛かった時間は7・9人・分/食で、お湯は76リットル/食。上手な施設では1食当たり時間は2人・分/食で、お湯は14リットル/食で済んでいるのに比べ電気、給湯、洗剤、労務が4倍前後と2軒とも実に無駄が多い。

 (3)配管関係の問題が目に付いた。1軒目の旅館では給湯管を改修で屋外露出にして保温材がほとんど欠落した状態で燃料を無駄にしていた。もう1軒の旅館でも温泉管の保温が欠落していて温度を損していた。

 生産性向上は「もったいない」と気付くことから始めても大きな効果がある。この4施設は1年間フォローアップするので、対策提言を実行して1年後に良い結果を報告したい。

 
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