年に一度東京都産業労働局観光部によるシティーセールスが1月末に行われ、日本旅館協会東京都支部の代表として参加した。東京にある観光施設、交通機関、宿泊施設などが現地の旅行社を集め、東京を売り込むのである。今年はロシア。最初に気になったのは1月末のモスクワの天候だ。マイナス17度ということを耳にして、どのような防寒着が必要なのかと思った。シェレメーチエヴォ空港に到着時、心構えもあったおかげなのか意外と暖かいのに驚いた。ガイドさんからは「今日は特別暖かく、あなたたちが暖かい風を運んできてくれた。ありがとう」と感謝されるくらいだった。
現地ではメディアセミナー、商談会、レセプションがある。売り込む日本側のメインはやはり商談会である。事前の案内ではロシアの旅行会社30社弱と、東京から現地入りした私たちセラー側15社となった。
毎回もっとも勉強になるのはロシア側の興味の対象と通訳の方の現地情報だ。日本政府は先ごろロシア国籍の旅行者に対してビザの緩和を行ったので、2010年の訪日客数は5万1457人だったのに対し、2017年は7万7200人と確実に増えてきている。しかし現地の旅行社の話からはビザの発給は全面緩和とはなっておらず、訪日するには日本での滞在先の証明を求められると聞いた。
ロシアの主要都市は日本よりもヨーロッパに近く、フランス、イタリアへは飛行時間4時間半ほどで行ける。航空券も日本へ行くより安い。ロシアでは日本食がブームとはいえ、まだまだ遠い国の上、旅費が高いとなるとロシアの観光客が日本に押し掛けるとはいかないようだ。
商談会での東京のプロモーションビデオでは東京を「伝統と革新」が切り結び、共存する街として紹介していた。ロシアの雰囲気はゆったりと古典的だ。そのロシアの国民に「東京に行ってみたい」と思わせる要素をみつけるには東京に来たロシアの旅行客に聞き取り調査を行い、私たちの気付かない東京の魅力や欠点を発見することだと思った。
この旅行に先立って一人旅で4年前にサンクトペテルブルクとモスクワを観光し、夜行列車にも乗っている。その時の印象は若いロシア人は英語が解るので街中では困らないし、どのレストランでも農業国で季節が夏だったので、野菜をはじめ食べ物がおいしいし外れがない。その上に歴代政府がお金をつぎ込んだからか、教会も美術館も美しくゴージャスだった。今回は3泊と短い期間だったので観光する時間はあまりなかったのだが、栃ノ心の出身国ジョージア料理を2回いただきすっかりジョージア料理のファンになったのが何よりのお土産となった。