前回に引き続き、旅館・ホテルの現場ですぐに実践できる問題解決スキルについて分かりやすく説明しよう。前例と勘に頼って安易に解決を図ろうとせず、業務効率や顧客満足度、売上利益を低下させている原因を見抜き、最適な解決策を考える能力を現場スタッフに身につけさせよう。
7、人の動きで考える
旅館・ホテルで人の動きというと、お客さまの動きを念頭に考えがちであるが、生産性や効率を改善するためには、スタッフの動きに着目する必要がある。労働負荷の軽減にもつながるので、スタッフも意欲的に取り組んでくれるはずだ。
人の動きで特に問題が起きやすいのは、会場準備の動き、料理・飲料の配膳の動き(調理場・パントリーから食事会場まで)、伝票記入からチェックアウト精算までの動き、消耗品・備品を取りにいく動き、清掃の準備から清掃完了までの動きである。
平面図の拡大コピー(手書きの自作平面図でも可)とペン、ストップウォッチ(スマートフォンのタイマー機能でも可)を持ち、スタッフの動きと所要時間を記録してみよう。実際の観察と記録作業は、シフトに入らない別のスタッフにチェックさせるとよい。問題点を客観的に見る機会を与えて、問題解決スキルを身につけさせるためだ。
着眼点は、(1)移動距離が必要以上に長くないか(2)移動回数が必要以上に多くないか(3)忙しいスタッフと暇なスタッフの差がないか(4)時間のかかっている作業は何か(5)手書き帳票の作成などアナログ作業はないか―である。
移動距離が長かったり、移動回数が多かったりすれば、時間を浪費するだけでなく、スタッフの疲弊にもつながる。レイアウト変更や役割分担の見直し、備品の購入などによって改善することが可能だ。スタッフの繁閑に差があれば、習熟度や役割分担に問題がある可能性がある。
時間のかかっている作業は、本当は必要のない作業かもしれない。特定の人しかできない仕事のやり方は褒められることではない。アナログ作業は、システムの入れ替えやデータ連携により省力化できないか検討してみよう。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)