【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン387】やる気にさせる企画アイデア集5 青木康弘


 前回に引き続き、マンネリになりがちな組織風土から脱却し、スタッフのやる気を高める企画アイデアを紹介しよう。旅館・ホテルは定型的な業務が多いため、どうしてもスタッフがマンネリ感を感じがちだ。職場の活性化を図る施策展開の参考にしてほしい。

 7、360度の人事評価制度を導入する

 一般的な人事評価制度は、上司(または経営者)が部下を評価するというものだが、1人の人間の評価が正確なものとは限らない。上司によっては、自分に都合の良いスタッフをひいきにする可能性もあり、旅館・ホテル経営全体として公平かつ公正な評価となっているかは疑問である。

 360度の人事評価制度は、上司だけでなく、他部門の上席者や同僚、部下からも人事評価してもらう制度である。同僚や部下からも信任が厚いスタッフが高い評価を得ることになるため、チームワークが要求される旅館・ホテル業にとって望ましい人事制度の一つと言える。

 実際の運用は難しいものではない。上司が部下を査定する評価シートに加えて、部下や同僚が査定する評価シートを作成し導入すればよい。部下や同僚からの評価を必ずしも昇給昇格や賞与査定に反映させる必要はない。評価の結果を本人に伝えるだけでも大変意義がある。

 部下や同僚の評価が高い管理職スタッフは大抜擢してもよい。人望あるスタッフが要職に就くことは、職場の活性化につながる。大抜擢をした経営者に対しても、人を見る目があるとプラスの評価につながるだろう。

 一部の旅館・ホテルが導入している支配人の立候補制度は、360度の人事評価を応用したものと言える。自薦、他薦によって支配人候補を募り、一般スタッフの投票によって決定する。いわば人気投票になるので、スタッフに甘い支配人候補が当選してしまう懸念もあるが、報酬制度の工夫によって回避することは可能である。

 すなわち、支配人がマネジメントする部門の予算達成状況が、所属スタッフ全員の処遇に影響する仕組みとするのである。

 スタッフに好かれていても昇給や賞与の増額が期待できない候補者にあえて投票するスタッフは少数と予想される。人望とマネジメント能力を兼ね備えたマネジメントスタッフを合理的に選出することができるだろう。

(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

 
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