前回に引き続き、金融庁から公表された「金融仲介機能のベンチマーク」について紹介しよう。全国の金融機関が対象となっており、皆さまのメイン行の重役も対応に追われていることだろう。当然のことながら、旅館・ホテルに対する取引方針にも影響するので理解しておくことをおすすめする。
各金融機関が自身の事業戦略やビジネスモデルなどを踏まえて選択できる項目を「選択ベンチマーク」というが、50項目にも及ぶので旅館・ホテルに関係の深い項目だけ紹介しよう。
6、取引先の本業支援に関連する評価について、支店・個人の業績評価に占める割合
金融機関の支店や個人の業績評価は年2回行われ、数十項目に及ぶのが一般的である。昇進や賞与査定に直結するため、店をあげてノルマ達成に取り組んでいる。今回のベンチマーク導入により、取引先の本業支援に関連する評価項目がより重視されることになりそうだ。
これまでは、新規融資やローン、クレジットカード、投資信託などに熱心だった担当者が、経営改善やM&A、事業承継、ファンド、販路開拓、専門家の紹介について提案してくるかもしれない。旅館・ホテルの経営者にとって唐突な提案もあるかもしれないが、金融庁の方針が反映されたものと分かれば受け止めもしやすいだろう。
提案を受けるばかりではなく、逆に相談してもよい。これまで、貸出取引や手数料につながること以外は消極的だった金融機関の担当者が協力してくれるようになるだろう。本業支援をすることが金融機関の支店や営業担当者の成績になるからだ。新規事業や販路開拓、経営改善につながるようなサービスや専門家の紹介ができないか聞いてみると良いだろう。
人材採用やIT活用、設備投資などに関する補助金制度についても、会社独自で利用可能か調べたり、申請書を作成したりするのは大変である。補助金利用のサポートをしてくれる専門家を紹介してもらっても良いだろう。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)