2020年はどのような年になるだろうか。首都圏では東京オリンピック・パラリンピックによる需要増が期待されるが、客室の供給過多による足元の稼働率低下も懸念されている。20年に4千万人を目標にしていたインバウンドは減速基調が見られ、好況に見えた観光業界も変化の兆しが出始めている。
旅館・ホテル向け建設融資に積極的だった金融機関は、手のひらを返したように慎重姿勢になっている。今回コラムでは、変調が懸念される20年においても持続的成長するためのポイントを紹介したい。
1、不急の設備投資は戦略的に先送りする
建設会社の人手不足、材料費高騰により、工事単価は年々上昇傾向にある。オリ・パラの準備に向けて追い込みがかかる20年前半は特に需給ひっ迫が生じるだろう。
施工管理者が不足する建設会社にとって、小規模よりも中規模以上の現場を優先しがちである。そのために小規模の現場は建設会社探しに苦労しやすく、仮に請負先が決まったとしても工事単価が高くなりがちだ。
建物・設備に営業上の支障が出ているなど、直ちに着工する必要がないのであれば、思い切って20年秋以降に着工を先送りすることをお勧めする。割高な工事費で増改築して銀行返済に苦労しないよう気をつけたい。
2、システム投資により働き方改革を進める
他業界の先進事例を参考に、過去の慣習にとらわれずに働き方改革を進めることが望ましい。働くことへの価値観がガラッと変わり、過酷な労働環境で非難されることの多かった飲食やサービス業でも働き方改革へ取り組む事例が増えてきている。
旅館・ホテルは装置産業であるため、売り上げの伸び代には限界がある。売り上げに対する人件費率を一定とするならば、昇給による離職防止策は打ちにくい。
労働環境を改善しながら待遇改善するためには、省力化を進めてスタッフ1人あたりの売り上げを高めていくしかない。
システム投資を積極的に進めて、フロント業務やレベニューマネジメント、発注管理、在庫管理、労務管理、業績管理などを省力化していきたい。はやりのパッケージソフトを導入するだけで満足するのではなく、システム間の連携にも配慮して人の手間がかからないよう気をつけよう。
(アルファコンサルティング代表取締役)