旅館・ホテルの滞在中の満足度は、チェックイン後や夕食後に提供される館内外のサービスで一層高めることができる。大手の旅館・ホテルであれば、充実した散策ツアーや館内イベントを実施するための予算や人員を確保できるが、中小の館は容易ではない。今回コラムでは中小旅館・ホテルでもできる滞在中サービスの魅力アップ策を紹介しよう。
はじめに、チェックインからチェックアウトまで、想像で構わないのでお客さまの行動を30分単位で時系列に整理して、「何もやることがない時間帯」を特定しよう。
離れやスイート仕様でプライベート感を重視した館であればスタッフがお客さまに余計な関与をしないことが望まれるが、和室1間で客室内にテレビ以外に娯楽がない場合は退屈しやすい。滞在中サービスを必要とする時間帯を特定することで、どのような魅力アップ策を企画したら良いか手がかりになる。
例えば、チェックインから客室へのご案内を15時から16時まで行うとする。その後、夕食の時間が18時から20時、入浴の時間が22時から23時と仮定すると、16時から18時、20時から22時まで、お客さまにとって何もやることがない時間になり得ることが分かる。お客さまによって利用時間帯は異なるので、いくつかのパターンを作ると良い。「何もやることがなくて退屈な時間」が思いのほか多いことに気づくだろう。
予算や人員が限られる中で取り組みやすいのが、飲食の無償提供だ。あらかじめ提供する時間を1、2時間程度に限定すれば負担が軽減される。
例えば、自分で焼く手作りせんべいや綿あめ作り、自分で作るかき氷はファミリー客や若いカップルから評価を得やすいだろう。また、湯上がり後の地元産牛乳、自分で作るフレーバー・ジュース、デトックスウォーター、アイスキャンディーも喜ばれる。
夜食として無償提供されるおにぎり、半ラーメン、自家製サングリアなどもカップルの口コミアップにつながるだろう。
サービス一つ一つの対価を求めずに、手間や原価があまりかからない無償サービスを提供して滞在時間中の満足度を向上させることで、次の宿泊単価アップを狙っていくことができるだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)