前回に引き続き、業務マニュアルを上手に作成するための手順を紹介しよう。作成するにあたって重要となるポイントだけでなく、運用・定着化のコツも紹介したい。
4、勤務中の心構え
旅館・ホテルで働くスタッフとして、どのような気持ちで仕事に取り組むべきか分かりやすくまとめてみよう。
日々の単調な業務を繰り返していると、初心を忘れて等閑(なおざり)な態度をとるスタッフが目立つようになる。お客さまからの口コミ評価が低下するだけでなく、職場の雰囲気も悪くなり、ひいては業績悪化の原因となる。大切なことなので入社後も繰り返し唱和できるような内容が望ましい。具体的には、次のように整理すると良いだろう。
まず、お客さまに対する心構え、職場での心構えをまとめる。お客さまに対しては「あなたの接客態度、姿勢、言葉遣いで、お客さまは当館を評価します。当館を代表するひとりとして最大限のサービスを行いましょう」などの表現でまとめると良いだろう。
また、職場においては、「規則やマナーを守り、規律正しく仕事に取り組みましょう。他部署のスタッフともお互い協力し、チームワークを発揮して気持ち良い職場環境を作りましょう」などの表現が良いだろう。
次に、「報告・連絡・相談(ほうれんそう)」の重要性をまとめる。低い口コミ評価項目がいつまでたっても改善されなかったり、クレームの初動対応に失敗したり、中間管理職が育たなかったりという問題を引き起こす原因の一つとして、報告・連絡・相談が徹底されていないことがある。これは旅館・ホテル業だけでなく、ビジネスマンの基本なので全員ができるよう浸透させたい。
次に、「職場での基本的な態度」をまとめる。特に大切なのが笑顔の重要性である。笑顔の写真を多く掲載して、どのような表情が望ましいか分かりやすくまとめると良いだろう。スタッフの何気ない態度や言動が深刻なクレームや低評価につながる。同じ情報を伝えるのでも、スタッフの表情や言い方一つで印象は大きく異なることをよく教育しよう。
最後に、職場内で起こり得る不正を未然に防止するために、勤務時間中は業務に専念することや、備品の業務以外の使用禁止、経費節約の大切さ、お客さま情報を口外しないこと、職場で得た情報を口外しないことなどを整理しよう。入社時に得心すれば、万が一、不正が発生した時に注意しやすくなる。
(アルファコンサルティング代表取締役)