先日、某大手パンメーカーが経営するレストランでランチをした。スタッフがテーブルに運んできて下さったパンの中に、焼きたての米粉パンがあった。軽くふんわりしていて、かつてのイメージとは全く違う。もっと重たくて、お世辞にもおいしいとは言えない代物だったハズ。
一昔前は…と言うのもややはばかられるが、小麦粉アレルギーの人は少なかった。なぜなら、学校給食の主食がパンだったのだから。筆者はたまたま給食のない学校に通っていたが、同世代は皆パンと牛乳におかずという給食を食べて育っているのだ。
だが、近年、小麦粉アレルギーの子どもが増え、また、グルテンフリー、つまり小麦粉に含まれるタンパク質を取らないことで、体質改善やダイエットをする人も急増した。彼らは小麦粉の入ったパンを口にすることができない。
そこでがぜん力を発揮するのが米粉である。だが以前は米粉100%のパンを作るのは難しかった。膨らまずにべっちょりしてしまうのだ。けれど、今は技術の進歩により可能になった。一つは品種改良。「こなだもん」をはじめとする、粒の細かい米粉が作れる品種ができたこと。もう一つは製粉技術。小麦粉以下の大きさの「微細粉米粉」が開発されたことも大きい。シフォンケーキのようなふんわり軽いお菓子も作れるのだからスゴイ。
筆者が親しくさせていただいている、兵庫県養父市にある菓子店「カタシマ」では、地元但馬のブランド米「コウノトリ育むお米」の米粉を100%使用したカステラ「メシテラ」を販売している。
コウノトリの野生復帰の試みに取り組んでいるこの地域ならではの、農薬や化学肥料に頼らない農法で育てたお米で作った米粉と和三盆糖を使い、高圧スチームを利用した特殊な製法で生み出したのが、この米粉のカステラである。ふんわりしつつ、もっちり感もあって、和三盆糖の上品な甘味があとをひくおいしさ。
いやはや、これだけ米粉が進化しているとは思わなかった。イマドキ、米粉どころかお米からパンが作れるホームベーカリーまで存在するのだ。ここは一つ、食料自給率向上に貢献するために、筆者も何かチャレンジしてみようと思ったが、手元に米粉はない。だがふと見ると、冷たい白玉が食べたいと思って夏に買っておいた白玉粉があるではないか! 白玉粉だって、糯(もち)米だけど立派な米粉の一種である。
そこで作ったのがブラジルのパン、「ポンデケージョ」。現地ではタピオカ粉で作るのだが、白玉粉でも代用できるのだ。
白玉粉と卵と牛乳と粉チーズをフードプロセッサーで混ぜ、生地を丸めてオーブンで焼くだけ。超簡単なのに、表面はカリッと、中はモチモチでチーズの風味がして、コレだけでワインが飲める!という仕上がりに大満足。スゴイぞ、米粉! ニッポンの米粉の可能性は、まだまだ広がるだろうと確信した筆者であった。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
ポンデケージョ(焼く前)
ポンデケージョ(焼いた後)