祭りと言うと、「ワッショイ!」が一般的かと思うが、ここの掛け声は「オイサッ!」である。ユネスコ無形文化遺産に登録された、博多祇園山笠だ。
中洲にある精肉・すき焼き・洋食店「ちんや」の女将、古賀人美さんに「いっぺん観に来んしゃい」と、なかなか入手できない桟敷席のチケットをご手配いただき実現した山笠見物。毎年7月1日から15日まで開催されるが、われわれは最後の3日間に参戦した。
13日の夜には貴重な体験も。博多の街が七つの「流」という区域に分かれ、それぞれに重さ1トンもの山笠を舁き、最終日の「追い山」でタイムを競うワケだが、「ちんや」のある中洲を本拠地とする「中洲流」3丁目の面々が、常日頃直会の場所やご祝儀を提供している女将にお礼参りに来るというのだ。
水法被に締め込み姿の男たちが並び、御礼の口上に続いて博多のハレの舞台の歌「祝い目出度」を披露した後、「博多手一本」で締めるという古くからのしきたりを目の当たりにし、身の引き締まる思い。
翌14日の夜から15日早朝にかけては、いよいよフィナーレの「追い山」。4時59分から、順次櫛田神社に山笠が入って来るのを見物するのだが、桟敷席への入場は午前2時から。つまりは、観客もほぼ徹夜である。全力疾走の舁き手はモチロンだが、このお祭りに参加する総ての人が体力勝負なのだ。
…となると、しっかりと栄養補給をしておかなければいけない。当然昼も夜も「ちんや」でガッツリお肉をいただくことに。いつもは2階のお座敷で、看板メニューのすき焼きかしゃぶ鍋を食すことが多いのだが、今回初めて1階の洋食レストランでランチをいただき、そのクオリティーの高さにビックリ!
まずは、女将のおススメ焼肉定食。運ばれてきた鉄のプレートに、お肉がてんこ盛り! 下にキャベツが入っているとは言え、ものすごいボリュームだ。味付けは、辛過ぎず甘過ぎず、ちょうど良いあん梅ながら、ついついご飯が進んでしまうお味。お肉も「ちんや」の名に恥じない上質さで、軟らかい。コレでたったの860円というのだから驚きだ。
そして、ビーフカツ定食。和牛のカツレツに、特製デミグラスソースが掛かっているのだが、衣はサクサク、中はジューシー、ソースの味もプロならでは。
さらに、2階で季節限定で提供しているという、「肉トロ丼」もいただいてみた。丼のご飯の半分程度を、コクのある味付きのお肉が覆い、残りの部分にトロロがかかり、卵黄が載っている。コレが想定外のウマさ。トロロとのコラボで、超スタミナチャージ!
夜、口に入れた途端にとろける美味なすき焼きを食しつつ、焼いて下さるお姉さんと話していたら、何と御年72歳だそう。女将さんも彼女も10歳は若く見えるが、その秘訣はやっぱり肉食なのだろうか?
「ちんや」と博多っ子がもっと大好きになった、濃い3日間であった。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
焼肉定食
ビーフカツ定食
肉トロ丼