地元産ブルー・クラブのクラブケーキ入りエッグ・ベネディクトを目指し、ラ・ホーヤの有名店へブランチに。エッグ・ベネディクトにはさまざまなスタイルがあるが、クラブケーキが挟まれているものは、クラブケーキ発祥の地メリーランド州にある、ブルー・クラブの産地チェサピーク湾にちなんで、「エッグ・チェサピーク」と呼ばれる。同店では「クラブ・イパネマ・エッグ・ベネディクト」と、オリジナル名であった。
もう一つ、「カルネ・アサーダ・ベネディクト」という、ポーチド・エッグの下にカルネ・アサーダとアボカドが潜んでいるものも。カルネは「肉」、アサーダは「焼く」という意味のメキシコ風ステーキで、特製のタレに漬け込んで焼いたもの。こちらも迷わずオーダー。ついでに、同店名物のフレンチ・トーストも!
青空の下、眼前の海を眺めながら潮風に吹かれ、何て気持ちが良いんだろう…と、こんなシチュエーションだと、どうしても一杯やりたくなる。「朝シャン」という言葉があるが、筆者にとってそれは洗髪ではなく、朝に泡モノを飲むということ。で、グラスワインはないかと尋ねると、あろうことか、アルコールの提供はランチタイムから、という答えが帰ってきた。
時計は10時半を指しており、ランチ開始までまだ1時間もある。なんで? 何でどーして? カリフォルニア州ってそういう法律あったっけ? マリリン・モンローが毎朝シャンパンを飲んでいたのは有名な話だけど、ハリウッドってカリフォルニア州だよね?と、頭の中が疑問符だらけ。でも、おとなしくあきらめたが、テンションは一気に下がってしまった。
イタリアでは、朝食ブッフェにスプマンテが置いてあるホテルがあったし、ドイツでもそうだった。ビジネスではなく観光目的の旅行者にとっては、旅行中の毎日が休日。朝からお酒を飲んでも、誰に憚ることもないのだ。
そうそう、秋保温泉の「伝承千年の宿 佐勘」の朝食ブッフェ会場に、生ビールサーバーだけでなく赤、白のワインが置いてあるのを見た時は、ブラボー!と思ったものだ。
さて、話を戻そう。卵が滲みしみのフレンチ・トーストは、「世界に名高い」と誇らしげに書かれたメニューの説明通り、確かに絶品であった。スフレのようにふんわり、かつリッチな味わい。クラブケーキ入りエッグ・ベネディクトは、一般的なオランデーズ・ソースではなくココナッツ・トマトソースだったが、なるほど蟹の淡泊な味を補うにはこの方が合っていると感じた。カルネ・アサーダはちと肉が硬かったが、自家製ダレの味はバッチリ。いずれも卵にナイフを入れると、トロ~リと黄身が出てくる瞬間がたまらない。これぞ、エッグ・ベネディクトの醍醐味だ。
食後目の前の海岸に出ると、触れるほど近い距離で、アシカとアザラシが出迎えてくれた。このレストランに来なければ出会えなかったと思うと、感慨深い。次回は、メキシコ初上陸!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。