タイトルは、クイズ番組の難読漢字というワケではない。ご承知の通りお味噌汁(みそしる)のことで、「御味御付」や「御実御汁食」などとも書く。表記やその理由には諸説あるが、お味噌汁を表す女房詞(にょうぼうことば)「おつけ」に、接頭語「御御(おみ)」をつけて丁寧に表現したという説が主流らしい。足を丁寧に言う「おみ足」と同じだ。
つまりはそれだけ大層なモノということになる。同じ汁物ならお吸い物の方が格上のように感じるが、どっこいそうではないようだ。例えば、武家の礼法に則った儀礼食である「本膳料理」で、お客さまの正面に置かれる「本膳」に載る汁物「本汁」は、味噌仕立てと決まっている。この「本膳」は、現在の和食の基本的な御献立とされる「一汁三菜」で構成され、その「汁」は、すまし汁でなく味噌汁がお決まりなのだ。
どうして?というギモンに、農林水産省の「日本の伝統的食文化としての和食」というサイトが答えている。要約すると、和食の一番基本的な要件は、ご飯を主食とするということで、ご飯と共に汁を食すのが二番目の要件だという。その汁の定義としては、ご飯と共にとるのが味噌汁で、酒と共にとるのが吸い物であるという。確かに、ご飯とくればお味噌汁だ。
さて、そのお味噌汁、今や海外でも「Miso soup」で通じるほどの人気者だが、そのヒミツはやっぱり、旨味(うまみ)の素「出汁(だし)」を使っていることと、ニッポンが誇る発酵食品「味噌」が入っていること、そして具材の自由度が高いことだろう。
「出汁」について述べ始めたらキリがないので別の機会に譲るとして、ここでは「味噌」について。味噌は大豆や米、麦等の穀物に、塩と麹(こうじ)を加えて発酵させた物で、米みそ、麦みそ、豆みそ、それらを混合した調合みそに分類される。
発酵させることで旨味の素アミノ酸が増えるので、味噌汁以外にも調味料として活躍している。また、主原料が大豆でタンパク質が豊富なため、昔から日本人の貴重な蛋白(たんぱく)源だった。さらに「医者いらず」といわれるほど、健康にも良いらしい。江戸時代に記された「本朝食鑑」によれば、味噌は消化を助け、血の巡りを良くし、筋骨や心臓を丈夫にし、心身を元気にする上、髪やヒゲを黒くする効果まであるとされている。
イマドキも、味噌汁の効果効能をうたった本が目白押しだ。老化防止をはじめ、動脈硬化やガン、更年期障害に効くばかりか、ダイエットにも効果的だとか。それなら食べなくちゃ!
自分で作るなら、宗田節も混ぜた濃い目の鰹(かつお)出汁で、2種以上の味噌を使い、どちらかというと赤出汁寄りのお味噌汁が好み。ご飯の甘味が一層増して、あぁまた食べ過ぎちゃう。
昨夜のお鍋の残りを、豚肉と白菜のなんちゃって豚汁にリフォームした。いただく前に御御御付、と言ってみると、何だかとってもぜいたくな食べ物に思えた。
おかげさまで、この連載も本号で300回! この場をお借りして、読者の皆さまと観光経済新聞社に感謝!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。