【私の視点 観光羅針盤 132】せとうちDMOのチャレンジ 石森秀三


 1月中旬に広島県議会の広域・国際観光振興対策特別委員会で日本版DMOについて参考人として意見陳述を行う機会があった。

 観光庁は昨年11月末に一定の要件を満たした41法人を「日本版DMO」の第1弾として正式登録している。そのうち、広域連携DMOとして登録された5法人の一つが「一般社団法人せとうち観光推進機構」である。この法人は瀬戸内を共有する7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)を中心にして2016年に設立された。

 広島県の湯崎英彦知事は09年に44歳で知事に初当選した。知事就任後ただちに「瀬戸内『海の道』構想」を提唱され、瀬戸内海に点在する多彩な地域資源を磨き上げ、相互連携させて、エリア全体の魅力アップを図り、地域産業の活性化につなげる」ことに着目された。私は10年に設置された「瀬戸内『海の道』構想策定委員会」の委員長を務め、構想実現に協力した。

 広域連携は長らく国家的・地域的課題としてさまざまなかたちで事業展開が図られてきたが、現実には「総論賛成、各論反対」で立ち消えになるケースがほとんどだった。「瀬戸内『海の道』構想」の場合にも7県による連携なので成功させるのは容易ではないと危惧していたが、湯崎知事のリーダーシップと関係各位の非常なる尽力で着実に進展している。
 16年に「せとうち観光推進機構」が設立されるとともに、同年に瀬戸内エリアの金融機関(地方銀行12行、信用金庫6庫など)を中心にして「(株)瀬戸内ブランドコーポレーション」が設立され、続いて「(株)せとうちDMOメンバーズ」も設立された。それらの三つの組織が緊密に連携して「せとうちDMO」が運営されている。

 DMOの使命は「せとうちブランドの確立による地方創生(地域再生と成長循環)の実現」、そのために(1)せとうちの魅力を国内外に発信し来訪者の増加を図る(2)せとうちブランドの確立(3)域内事業者と住民の意欲を喚起し、新しい産業と雇用の拡大を促進(4)定住人口増加につなげて自律的かつ永続的な成長循環の創出―などに注力している。また外国人観光入り込み数、外国人延べ宿泊数、外国人観光総収入などについて数値目標を設定している。

 具体的事業としては、主要6テーマ(サイクリング、クルーズ、アート、宿、食、地域産品)、情報発信(インターネットメディアSETOUCHI Finder)、瀬戸内ブランド登録制度(822商品)、会員制度(せとうちメンバーズ731社)、会員サービス(経営サポート、ビジネスサポート、プロモーションサポート)などを展開。

 さらに地方銀行などの出資で設立した「せとうち観光活性化ファンド(総額98億円)」を活用した事業支援(瀬戸内周遊クルーズ事業、古民家宿泊事業など)にも尽力している。

 次回は広島県が提唱している「日本版TID(観光改善地区)」制度について取り上げたい。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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