【特別対談】KNT-CTホールディングス 米田昭正社長 × KNT-CTパートナーズ会 堀 泰則会長


堀会長(左)と米田社長

コロナ禍、「共生と共創」の精神で乗り切ろう

 KNT―CTパートナーズ会(KCP会、約4千会員)の第4回通常総会が6月2日、東京・白金台のシェラトン都ホテル東京で開催される。リアルでの開催は3年ぶり。堀則会長(ひだホテルプラザ会長)とKNT―CTホールディングス(HD)の米田昭正社長の対談を通して、ウィズコロナ時代の両者の在り方を語っていただいた。(4月21日、東京・銀座のクラブツーリズムロイヤル・グランドステージで。司会は論説委員の内井高弘)

 

21年の手応え 新たなチャレンジ

 ――2021年度はどんな年だったか。

 米田 新型コロナウイルス禍の影響を受け、激動の年であり、またウィズコロナを模索した年だった。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令もあって人が動かず、クラブツーリズム(CT)ではシニア会員が多いこともあり、ほぼ催行できない状況が続いた。

 その中にあって、KNTは活動領域を広げ、自治体のワクチン接種事業やPCR検査事業の受託、コールセンターなど、いわゆる「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)」と呼ぶ事業が伸び、収支を支えた。

 また、東京五輪・パラリンピックでは大会関係者のバス輸送を担い、延べ9万台の運行の実績を上げ、それが北京五輪・パラリンピックの選手団やメディア輸送にもつながった。さらに、25年開催の大阪・関西万博の輸送調査も受託し、今後の成長の糧になった。

 

米田社長

 

 ――希望退職も募ったようだが。

 米田 約1400人の応募があったが、8割強の希望退職者の新たな仕事が決まっている。新天地で、ぜひ、今まで培った経験を生かして活躍をしてほしい。

 ――KCP会はコロナ前の19年5月30日に設立された。その後コロナ禍に見舞われ、出鼻をくじかれた格好だが。

 堀 KCP会は宿泊施設、運輸施設、観光施設が一体となった大きな組織としてスタートしたが、コロナ禍の中で思うような事業運営ができなかったのは残念だ。

 19年度は書面総会、20年度は正副会長会議をもって総会に代えたが、今年度はリアルで開くことができ、ホッとしている。会員、会社にとって、顔を合わせて情報交換できる意義は大きい。

 厳しい状況にあっても五つの委員会(プロジェクト、未来創造、ウェブ、インバウンド、教育旅行)は活発に活動し、課題を共有できた。

 

堀会長

 

 ――当初、約4千の会員でスタートしたが、増減は。

 堀 134の会員が退会したが、新しい会員も入ってきている。厳しい運営を強いられる状況だが、大きな変動はない。

 ――コロナで企業の在り方が変わったといわれる。特に旅行業は需要そのものが減り、事業継続を断念する企業も多い。事業形態の変革を迫られている。

 米田 昨年10月、グループの地域会社等9社を1社にまとめるなど、構造改革を行った。確かに旅行を取り巻く環境は悪化したが、消費者の旅の意欲は衰えることなく、移動制限の反動なのか、ますます旅への思いが高まっていると感じている。

 従来のコミッションビジネスから付加価値創造ビジネス、つまりフィービジネスにかじを切らなければ生き残りは難しく、BPO事業の伸びはそれが間違いでないことを裏付けている。

 フィービジネスでは着地型商品の造成、発信が極めて重要になる。これは地方創生にもつながる。KCP会の皆さんはそれぞれの地域でリーダーであり、その声は商品造成にとって欠かせない。一緒に新たな価値を作っていきたい。

 堀 会長就任の際、共に生きて共に創り上げ、新しい時代を生きていこうと「共生と共創」をテーマに掲げたが、まさに今の状況に適合していると思っている。教育旅行、団体旅行、そしてMICEを軸足として、新しい旅行事業形態を目指してほしい。

 CTも「新・クラブ1000構想」を打ち出し、新しい仕組み作りに動いている。会社の方向性に沿ってわれわれは動き、一緒になって新しいコンテンツ作りに取り組みたい。

 米田社長もご指摘されたが、会員の皆さんは地域のオピニオンリーダーであり、地域づくりへの関心も高い。着地型商品の造成にあたってはわれわれの意見を吸い上げていただき、販売してほしい。

 ――昨年10月、新ブランド「ブループラネット」を立ち上げたが、どんな事業なのか。

 米田 特定の分野に秀でた宿を、当社の独自基準によりカテゴリーごとに厳選し、お客さまにあったハイクラスな宿を提案するものだ。「一度は泊まりたい名旅館」「絶景露天風呂を楽しむ」「全室露天風呂付き×20室以下のおこもり宿」などがある。

 ――基準はどのくらいあるのだろうか。

 米田 現在、30項目の基準を設けて当社独自のサステナブルポリシーアンケートを実施している。当初はどうしてもハイクラス・高級な宿泊施設が対象となっていたが、お客さまの反応も上々で、サステナブルなおもてなしに注力する施設に広く参加の幅を広げていく取り組みを行っている。おかげさまで現在、764軒に参画いただいている。

 堀 お客さまの選択肢を増やそうということで、テーマ性をもった宿も入っている。ブループラネットに参加するのは施設のブランド力を上げることにもつながり、会員の目標になるのではないかと思う。

 米田 ブループラネットは50代以上の富裕層をメインターゲットにしていたが、始まってみると20~30代の女性のお客さまも多い。全く想定していなかったことが起こった(笑い)。コロナ禍で海外旅行に行けず、その分、インスタ映えする高級宿に泊ってみようというのだろう。若い人はお金を使わないわけではない。使うだけの価値があると判断すれば惜しまないようだ。考えを改めるべきだ。

 ――21年11月には「旅のアバターコンシェルジュ」も始まった。

 米田 全国どこからでも、お客さまの持つパソコンやスマートフォンなどからアクセス可能な新たなオンライン接客サービスだ。店頭で対面で行っている旅行相談や予約が来店せずにできる。

 旅行先や旅行商品、旅全般に関わる専門知識を持ったプロが、アバターを介して接客案内を行うことで、多様化するお客さまのニーズや相談により的確に対応する。ブループラネットアバターも3月から始めている。

 ――現在は、どのくらいの数のアバターがいるのか。

 米田 開始当初は11体だったが、先ごろ新たに8体を追加した。具体的には、旅行先を詳しく案内する4体(東北、伊豆・箱根、大阪、中四国)、男性アバター2体(北海道、沖縄)、テーマアバター2体(温泉、お子さま連れ)で、11方面5テーマ、総勢19体となった。

将来的にはアバターとAI(人工知能)の融合も考えているが、旅の途中で発生するさまざまな問題をAIで解決するのにはまだまだ時間がかかる。課題の一つだ。

 堀 旅マエ、旅ナカ、旅アトを通してサポートでき、進化していくなというのが実感だ(笑い)。

ウィズコロナ 環境変化の対応

 ――まん延防止等重点措置も全面解除され、観光業界にもわずかながら希望の光が見えだしたが先行き楽観はできない。コロナがいつ完全に終息するかは見通せないし、果たしてそういう時が来るのかという思いもある。ウィズコロナを想定した事業運営が必要なのだろうか。

 堀 ウィズコロナの中で全ての産業が動いていく。とりわけ、観光業界の最大のテーマは「安心安全」であり、旅行者もそれを求めている。対応に慣れたからといって手を抜くことなく、感染防止を徹底し、楽しんでいただくのが一番だ。観光業界からは感染者を出さないという強い意志で臨むしかない。旅行会社も安心安全な商品を提供してほしい。

 米田 例えば、CTは旅の「ニュースタイル」ということで、独自の基準を作り対応している。手指の消毒はもちろん、バス定員を減らしたり、換気対策を徹底するなど今できることは完璧に実施して効果を上げている。3回目の接種証明や陰性証明を義務付けることも今や当たり前になってきており、消費者も受け入れている。

 堀 日本人は本当に真面目。ルールをきちんと守ってくれる。

 ――政府の観光需要喚起策「Go Toトラベル」キャンペーンは再開の見通しが立たない。

 堀 以前のように全国一斉にスタートすることはないだろう。段階的な実施が現実的ではないか。いずれにしろ、全国キャンペーンは夏以降になるのでは。

 同時に、観光業界としては入国制限を早い時期に撤廃することを求めたい。このままゲートを閉めていれば世界で始まっている誘客競争に後れを取る。日本を観光したいという外国人は多いが、そうした人たちが他国へ流れてしまいかねない。ゲートを開ければ着実にステップアップしていく。政府の英断を期待したい。

 ――コロナでインバウンドは消滅したが。

 米田 国際航空運送協会(IATA)はインバウンドが戻って来るのは24~25年ごろで、戻ってもコロナ禍前の9割ほどと見ているようだが、その通りだと思う。当社も今年はインバウンドを計算に入れていない。

 

万博への期待とメッセージ

 ――25年は大阪・関西万博の年だ。五輪・パラリンピックとは比べものにならないビッグイベントで、観光業界の期待も大きい。

 米田 近鉄グループとしては「もう3年しかない」という認識で、関西経済界一丸となって成功に向けまい進する。また、29年には大阪IR(カジノを含む統合型リゾート)が現実化しそうで、関西はこれから大いに盛り上がってくる。

 堀 25年は業界にとってのキーターゲットになる。観光がV字回復することを期待している。

 ――22年度の重点事業は。

 米田 今年度は売上高2600億円を見込んでいる。CTで1千億円、KNT系で1600億円だ。BPOをより強化し、当社グループ収入の半分ほどを旅行周辺領域で稼ぎたい。そのため、コールセンター受託や人材派遣、ECモール、プリンティングなど五つの新規事業を展開し始めている。

 堀 サステナブルな旅行形態と地域の結びつきをどう強めていくか、委員会などで議論し現実のものにしていく。また、地域連携を含めたイベントづくりを会社とともに行い、新しい旅のスタイルを作りたい。

 ――KCP会員に向けメッセージを。

 米田 当社グループのコミュニケーションメッセージでもある~すべての「旅したい」を応援します。~その一点に尽きる。ともに力を合わせていきましょう。

 堀 共生と共創の精神でやりましょう。会社とタッグを組み、コロナ禍に負けない強い組織を目指しましょう。

 

 
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