【焦点課題】2025年日本国際博覧会協会 運営事務局兼危機管理部長 石塚智之氏に聞く


石塚氏

万博と観光業界の連携

広域周遊などで観光の促進へ 万博は誘客で活用できる手段

 ――大阪・関西万博の概要と目指すものについて。

 「大阪・関西万博は、大阪の臨海部の夢洲を会場に2025年4月13日から10月13日までの184日間開催する。会期中には約2820万人(うち、海外からの来場者は約350万人)が来場する予定だ。万博のテーマは『いのち輝く未来社会のデザイン』。人間一人一人が自らの望む生き方を考え、それぞれの可能性を最大限に発揮できるようにするとともに、こうした生き方を支える持続可能な社会を国際社会で共創することを推し進める。万博では格差や対立の拡大といった新たな社会課題、AI、バイオテクノロジーなどの科学技術の進展、その結果としての長寿社会といった変化に直面する中、参加する一人一人に対して幸福な生き方とは何なのかを正面から問う。また、今回の万博では健康医療をはじめ、カーボンニュートラル、デジタル化といった取り組みを体現化するとともに、世界の叡智(えいち)を大阪、関西地域に集約する。多様な価値観を踏まえた上で諸課題を解決する策を提示していく場を目指す」

 ――進捗(しんちょく)状況について。

 「世界の国々や国際機関に対し、積極的な参加への招致活動を行っている。現在は、54の国と五つの国際機関から公式に参加表明をいただいている(9月9日現在)。8月19日には企業、団体向けの出展参加説明会を開催。企業と協会の意見交換を、密度を上げて行っている。説明会はオンライン開催だったが、2759人が参加するなど、興味、関心の高さが伺える。説明会の内容は現在もアーカイブで配信(10月29日午後5時まで)している」

 ――目標値があれば。

 「国数は150カ国、国際機関は25の参加を目指している」

 ――観光業界との連携について。

 「しっかりと連携を深め、進めていきたい。具体的なことはこれから詰めていくことになる。例えば、子どもたちに先進的な技術を見せることを目的とした修学旅行や、企画旅行といったツアーの開催が考えられる。共に利益を得られる取り組みについては、ぜひ提案や具体的な話をいただきたい。また、会場が海沿いで瀬戸内海の入り口という特殊なロケーションの中にあり、瀬戸内海でつながる地域と大阪・関西地方の往来の促進も図っていきたい。今後は近畿や中国、四国、九州の広域連携DMOとの連携を考えており、これらの各広域連携DMOが一堂に集まる会議を開催している。万博開催の機会を生かし、瀬戸内海、西日本、東日本、日本全体の魅力の発信や、広域周遊を通じた観光促進などを進めていきたい」

 ――万博での先進技術の活用は。

 「チケットの予約や交通手段の案内は先進技術を取り入れた仕組みを採用する予定だ。観光との連携では、MaaSを導入し、利便性が高いサービスを提供していきたい。万博は開催時だけでなく、終了後もレガシーとして残るものを実施できればと考えている」

 ――目玉コンテンツは。

 「昨年7月に河瀬直美氏や小山薫堂氏、石黒浩氏、落合陽一氏ら8人をテーマ事業プロデューサーに決定した。大阪・関西万博のテーマである『いのち輝く未来社会のデザイン』を実現するため、『いのちを知る』『いのちを育む』『いのちを守る』『いのちをつむぐ』『いのちを拡げる』『いのちを高める』『いのちを磨く』『いのちを響き合わせる』という、八つのテーマ事業を設ける。テーマ事業プロデューサーには、この八つのテーマ事業を、パビリオンでの展示やイベントを通じて表現し、発信していただく。テーマ事業は、大阪・関西万博を象徴・代表するプロジェクトになる」

 ――本開催までの機運醸成に関する取り組みは。

 「8月に出展参加説明会を行ったところであり、これからさらに内容や頻度を高めていく。運営事業局としても、関係者の万博への興味を高めていきたい」

 ――運営事業局の役割について。

 「(1)会場サービス・入場券(2)危機管理(3)交通―の三つの役割を担っている。来場者が安全、安心かつスムーズに来場いただけるように体制を整えていく」

 ――大阪・関西の観光の魅力とは。

 「会場と隣接する大阪湾は、交通の要所として人々の暮らしに欠かせなかったエリア。海や山といった自然と人間が共に歩んできた地であり、歴史の積み重ね、厚みを感じてもらいたい」

 ――観光業界へのメッセージを。

 「2005年の愛知万博開催時と比べ、観光の日本における経済、社会上での位置付けは飛躍的に大きくなった。特にインバウンドが拡大し、日本の観光のポテンシャルが高いことが証明された。万博は再び日本の魅力を伝える大きな場となる。現在、コロナ禍で観光業界は大変な中にあるが、今後を見据えたときに、万博は観光を大きく盛り上げていくための機会となるものであり、また誘客として活用できる手段でもある。万博では新しいこと、面白いことを進めていきたい。それには観光業界との連携は欠かせない。ぜひ協力をお願いしたい」

 

いしづか・ともゆき=1993年運輸省(現国土交通省)入省、海上保安庁総務部政務課長を経て今年7月から現職。

【聞き手・長木利通】

 
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