ツアー高付加価値化の動きも
2022年もコロナウイルスへの対応によって自由な国際観光が阻まれたスタートとなったが、今年こそは転換の年になると信じたい。今回は、日本国内関係者からよくいただく質問について紹介する(4月1日現在の情報に基づく)。
(1)タイのコロナ対応状況
タイ国内では、感染対策と経済活動の両立が基軸となり、オミクロン株による感染者急増の局面でも、ロックダウンは実施されなかった。
外国人観光客については、ワクチン接種済みの旅行者に対して、「テスト&ゴー」と呼ばれる制度により受け入れを進めており、入国時のPCR検査の結果が陰性であれば自由に行動できる。昨年11月の本制度の開始以降、受け付け停止や条件強化等、幾度となく運用が変更されているが、今年の2月にかけて累計で61万人弱の外国人が入国している。
また、タイ保健省は3月10日、今年7月をめどに新型コロナのパンデミック段階からエンデミック段階に移行する方針を表明しており、各指標が順調に移行すれば、入国時の検査も不要になるとしている。
(2)タイの主要旅行会社の営業状況
昨年9月にJNTOバンコク事務所がタイの旅行会社を対象に行ったアンケートでは、7割強が在宅勤務体制となっており、物販やカフェなど旅行業以外の事業へ展開した会社も一定程度見られた。長いコロナ禍を、人員削減やオフィス解約等のコスト削減も断行して耐えてきたが、その後、国内観光再開や外国人観光客受け入れもあり、旅行会社の稼働率は上がってきていると感じる。
当事務所が行ったウェビナーやオンライン商談会にも多くの社が積極的に参加して、国際観光の再開に備えている状況だ。現在は、高所得者層に対し、制約なく入国できるヨーロッパ等の海外旅行や、国内旅行商品を販売していると聞くが、一様に、一番人気の行き先である日本への観光再開を待ち望んでいる。旅行会社によると、高所得者層は他の人より先駆けて旅行、体験できる「特別感」を重視しており、日本の地方への訪問ニーズも高いと分かる。
(3)コロナ後の訪日回復は個人・団体どちらが早いか
タイ市場は13年の査証免除措置以降、FIT化が進んでおり、19年には団体ツアーによる訪日客数は全体の2割程度にとどまっていた。訪日リピーターが多いこともFIT比率が高いことの一因と言え、構造的には、訪日再開後も、個人旅行のニーズは引き続き強いと考えられる。一方で、査証発行の条件や日本におけるコロナ対応のあり方によってどのような影響を受けるかはまだ見通せない。また、タイ旅行会社も、高付加価値なツアー開発に力を入れているところであり、旅行会社による定番以外の観光地への誘客にも期待したい。
タイでは日本の風景を再現した商業施設が今年に入りオープンし、にぎわいを見せているなど、リピーターを中心に訪日への意欲は非常に高い。久々の日本を存分に満喫してもらえる日が早く訪れることを願う。
バンコク近郊にオープンした商業施設「Harajuku Thailand」の広告