国内レジャー中心に回復
米国における新型コロナウイルス感染症の状況は、2020年3月ごろから急拡大し、夏の小康状態を経て20年秋以降の休暇シーズンに再拡大した結果、現時点で累積の感染者数や死亡者数は世界最多となっている。
しかし、20年12月に始まったワクチン接種は、21年2月以降に急速に進み、8月初めの時点で少なくとも1回の接種を受けた者は、18歳以上に限れば、米国全体で約70%、ニューヨーク州で約75%となっている。
ワクチン接種が広がるにしたがい、新規感染者数、入院者数、死亡者数も減少を続けてきたことから、ニューヨーク州では、5月以降、飲食店などの営業時間制限や入客制限の緩和が実施された。6月25日には、20年3月に始まったニューヨーク州の緊急事態宣言が解除され、公共交通機関や医療機関などでのマスク着用などを除き、経済活動への制限は撤廃された。
こうした感染状況の改善も手伝い、米国の航空需要は回復を続けてきている。米国運輸保安庁(Transport Security Administration)による米国内空港の保安検査場通過人数は、7月には19年の実績に肉薄するまでに回復している。7月4日の独立記念日の連休では、一部の航空会社において急激な需要の回復に機材や職員の確保が追い付かず、やむを得ず欠航するという事態も生じるほどであった。
ただ、この旅行需要の回復は国内レジャーが中心であり、国内のビジネス需要はいまだに低迷を続けている。また、海外旅行については、欧州については光が見え始めているものの、アジアは欧州や南米のさらに後になるだろうというのが関係者の見立てである。
ところが、7月に入ると、特に米国南部をはじめとしたワクチン接種率の低い地域を中心にデルタ株による感染者数が急増している。これを受けて、米国疾病管理予防センター(CDC)は、7月27日、感染が一定程度拡大している地域では、ワクチン接種の有無にかかわらず、屋内でのマスク着用を推奨するに至った。
デルタ株は日本でも猛威を振るっており、感染者急増や緊急事態宣言の延長は、オリンピックにおける米国人選手の活躍とともに、当地メディアでもしばしば報道されている。好ましい点、好ましくない点を含めて日本の露出が高まっていることは複雑な気分であるが、当所では、この機会を最大限活用し、大会開催前の6月から米国における東京オリンピック・パラリンピック競技大会の放映権を有するテレビ局の地上波CMやオンライン媒体を活用した情報発信を行っているほか、メディア向けや旅行業界向けのニュースレターの発信などにより訪日関連コンテンツの継続的な露出を行っている。
また、本年後半には米国内での展示会、商談会などが徐々にオフラインで開催され始める予定であり、コロナ収束後、アジアに目が向いたときに日本が選ばれるよう、さまざまなチャネルでしっかり種をまいておきたい。