他に先駆けて市場開拓を
イタリアからの訪日客数は、過去5年間に約2倍に増加し、2017年は過去最高の12万5千人を記録した。
18年5月には、イタリアで最も権威ある旅行・観光の賞である「イタリア・トラベル・アワード2018」で、日本が文化を目的とした旅行先として最も魅力的な地域に与えられる「ベストデスティネーション 文化部門」に輝くなど、日本は今、イタリアで最も注目を集める旅行先の一つとなっている。
観光目的の訪日イタリア人は、夫婦・パートナーとのカップルでの来日が4割以上と高く、中でもハネムーナーの比率が訪日プロモーション重点20市場で最も高いのが特徴の一つとなっている。初訪日者が8割を占めることもあり、ゴールデンルートを中心としたコースを2週間程度かけて周遊するのが代表的な旅程だが、ハネムーナーにはこれらに加えて、沖縄や東南アジア、ポリネシアのビーチでのんびり延泊するコースも人気だ。個人旅行者が9割を占める一方で、店頭での予約率が3割以上と欧州で最も高く、旅行会社の販売力が強い市場となっている。
訪日人気が高まるにつれ、訪問地の多様化も進んでいる。従来から広島、高山・白川郷、金沢の人気が高かったが、近年ではイタリアで人気のガイドブック、ロンリープラネットが「2018年に訪れるべき地域」に選定した紀伊半島の熊野古道・高野山や、倉敷、四国遍路、妻籠・馬籠、城崎温泉などの商品化が進んでいる。18年からは大手旅行会社のアルピツアーが山陰の出雲、松江を新たに商品化した。いずれもゴールデンルートからの足回りがよく、豊かな自然に囲まれ、日本らしい街並みや伝統文化を堪能できる地域だ。イタリアの旅行会社は売れると判断すれば商品化のスピードが比較的早い。日本に関する情報がまだまだ十分でない今だからこそ、他に先駆けて市場開拓に着手することで、誘客のチャンスが大きく開かれると言えよう。
地方への誘客の観点では、イタリア最大のクルーズ会社、コスタクルーズによる日本発着クルーズの存在も見逃せない。イタリアのクルーズ人口は日本の約3倍の75万人(16年)。英国、ドイツに次ぐ欧州第3位のクルーズ大国だ。JNTOは18年のシーズンからイタリア国内でコスタと連携して大々的なキャンペーンを展開している。クルーズでは、九州の佐世保、鹿児島、日本海に面した浜田、酒田など、イタリア人がこれまであまり訪れていなかった地方に寄港するコースも設定されており、イタリアの旅行業界で圧倒的な存在感を持つコスタとの連携を通じて、JNTOとしても新しい地方の魅力訴求に力を入れていく。
訪日旅行の造成を行う旅行会社はJNTOが把握しているだけで60社以上あり、ローマやミラノだけでなく、全国に分散している。こうした旅行会社へのアプローチがイタリア市場の開拓の第一歩となる。JNTOでは、10月にリミニで行われるイタリア最大級の旅行博TTGに日本ブースを出展するほか、毎年秋から冬にかけて主要都市を複数組み合わせて巡回するセミナー・商談会を実施している。旅行会社に効率的にアプローチする機会として、こうしたJNTOの事業をぜひご活用いただきたい。