賃金上昇への圧力が高まっている。象徴的に表れているのが求人募集の時給相場だ。最低賃金の改定もあるが、背景にやはり求人難からくる人材獲得競争の激化がある。
そのままでは企業の収益性は圧迫され、利益率の低下、時には赤字転落を招く可能性もある。仮に時給が5%アップしたとする。全体の1割程度が新規採用だとして、そこだけなら人件費の上昇は5%×10%=0.5%で済むが、問題は既存従業員との賃金の逆転現象が生ずることだ。これをまともに解消しようとするなら、全体の賃金を引き上げなくてはならない。
こうした現実を前に、「ではどうするか?」を考えてゆかねばならない。そこでこの問題への対応策を簡単な図式にしてみた(下図)。人件費を出発点に、収益性確保策を並べ替えたような形だ。
全部で四つの判断ポイント(黒塗り箇所)を入れた。どの部分を「抑える(防ぐ)」か、あるいは「やむなし」とするか、それぞれご判断いただきたい。一番右側に示したのが対策方向の結論である。見れば「なんだ、当たり前のことじゃないか」と思われるかもしれない。しかしこのように経営の全体像の中で捉えておくことが大事なのである。
実際の対応は、こんな単純にどれか一つという訳ではなく、これらの対策を複合的に講じていくことになるだろう。
このうち、「人件費総額の増大」を「抑えたい」とする場合の、その右に示した内容が、「労働」あるいは「処遇」に関わる対策領域となる。
(株式会社リョケン代表取締役社長)