10月から跡見学園女子大学で「温泉と保養」の講座が始まりました。
兼任講師の依頼をいただきましたのは、観光コミュニティ学部がスタートする前年、2014年のこと。この間に私自身の温泉観も広がりました。特に手術後の本気の湯治体験から、温泉の力を身をもって知ったことが大きな変化です。バリアフリー温泉、ユニバーサルツーリズムに特化した取材も増やしました。情勢の変化といえば、やはり訪日外国人受け入れ状況でしょうか。それらも踏まえて、15回分の授業教材をつくりました。
改めて「温泉と保養」を考えますと、大切なのは、日本人は西洋医学が入ってくるはるか前から、温泉で体を整えてきたということ。現在は、「国民温泉保養地」は、「新・湯治」として長野県鹿教湯温泉がモデルとなり、現代に通用する湯治を模索しています。スイスやハンガリーなどのヨーロッパの療養温泉地の最新事情も調べ直し、日本の湯治との違いをさらに認識しました。
授業課題は、「これまでの温泉とこれからの温泉」。温泉の歴史をつたえ、これからの理想とする温泉地や旅館を学生さんにデザインしてもらう授業です。
初回授業のガイダンスでは、冒頭の私の自己紹介の中で「湯治」体験も話しました。学生さんの感想を読むと、特に、「湯治」に関心を寄せてくれている様子でした。「湯治という言葉を初めて聞いた」という学生さんもいました。
また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、「ユニバーサルツーリズム」にも強く関心を持っていました。何よりうれしかったのは、温泉を専門に学びたいという熱き気持ちに触れたことです。この秋から冬にかけては、本気で授業に取り組みたいと思います。
まだ正式な履修者は決定していませんが、現在の履修希望者は150名弱います。大学講師としての実績のない私の授業では、40人~50人集まれば十分という心持ちでしたので、背筋が伸びる思いです。温泉地、旅館、観光地で人材不足の話題をよく耳にしますので、少しでも情熱を持って観光に従事してくれる女性たちになってほしいものです。
最後によもやま話を。漫画「はいからさんが通る」は跡見学園が舞台となっていると聞いた記憶があったので、初回授業は物語の象徴でもある矢絣(やがすり)の着物を着ました。ところが、学生さんに話すと、「はいからさんが通る」そのものを知らない様子。あらあら。ジェネレーションギャップを痛感しながら、楽しみます。
(温泉エッセイスト)