インバウンド事業や自治体の政策の方向性についてアドバイスを求められる機会が増えました。ここ数カ月でさらにスピーディーに事が進んでいる感覚があります。かつて2008年初頭に「YOKOSO JAPAN大使」(現VISIT JAPAN大使)に任命された頃は、観光地や温泉地の方に訪日外国人観光客について話をしても他人事のような反応でした。今ではマスメディアで温泉を紹介することとインバウンドに関わることが半々くらいの割合です。
今、インバウンドの会議に出席するために佐賀県嬉野市役所にも通っています。5年ほど前から真剣にインバウンドに取り組んできた嬉野では、訪日外国人が起こすアクシデントや入浴方法のマナー違反のトラブルへの対応は心得ていて、現在は次なるステージへ移るための話し合いです。訪日外国人観光客を増やしたいというぼんやりとした目的ではなく、どの国のどういう層に来てほしいと明確な目標があるので、私もあらたなコンテンツを提案しやすいのです。
嬉野温泉はこれまで国内では「美肌の湯」としてPRしてきた経緯があるので、それを外国のターゲットにどのように伝えるかです。
温泉専門家としては、嬉野は美肌の湯であると同時に「美白の湯」です。もちろん温泉に入浴しただけで肌が白くなると言い切ることは難しいですが、嬉野には元々観光資源であった嬉野茶があります。ビタミンCを豊富に含むお茶は美白効果が期待できる。酒蔵もあり麹が簡単に手に入る。麹を「美白」のツールにも加えられる。さらに嬉野名物温泉湯豆腐は大豆のイソフラボン効果で女性ホルモンに良い影響をもたらします。これらを全てあわせて3泊4日の滞在型“美白温泉”とすることは難しくない。日本女性の肌の白さに憧れを持つアセアン諸国の女性たちが喜ぶ旅のツールのはずです。
身体の不自由な人も、ご高齢の方にも、もちろん健康の人にも、温泉は万人に優しい。それを活用して身体を整えてきた歴史は、世界で稀にみる習慣です。その日本人ならではの温泉活用法を外国人が興味をもたないはずがない。
嬉野は今回の会議の成果を来年度事業に組み込むようです。私も引き続き、実績が出るまで関わり見守っていきます。
温泉地の皆さん、その温泉地ならではのもともとある素材を活用して外国人が喜ぶ温泉を考えてみませんか。
(温泉エッセイスト)