【岐路 バスと観光 新たな関係 148】バスと観光のこれから17 高速バスマーケティング研究所代表 成定竜一


 多くのバス事業者にとって「観光」とは、貸し切りバスを利用する団体旅行を中心とした「昭和の旅行」のことである。ニーズが個人旅行にシフトしていることは意識されていない。

 一方、ツーリズム産業全体を見ても、「クルマ旅行」においては、旅行者自身の興味、関心に基づくオーダーメイドの旅行が実現しているが、「非クルマ旅行」で個性的な旅行を実現するのは、多くの旅行者にとってまだハードルが高い。バス業界として、そのミッシングリンクを埋めるため、一定の役割を果たすことはできると感じている。

 いや、むしろ、長らく「守り」に終始した路線バス事業者らにとって、新しい市場と出会うことそれ自体が、大きな刺激になると確信している。

 3年以上続けた本連載だが、今週で最終回である。観光とバスは、一見すると親和性が大きいように見えるが、それは貸し切りバスという分野が中心で、バス業界全体では必ずしも「ツーリズム産業の一員」という自己認識を持っていないことをご説明してきた。

 そして、ツーリズム産業を俯瞰して眺めると、貸し切りバスを使うツアー(職域旅行などの「社会的旅行」や、個人向けの発地型ツアーなど)は、残念ながら時代遅れになりつつある。代わりに、個人旅行向けの新しいタイプのバスサービスや、それらを上手に組み合わせた個人旅行を実現する新しい旅行流通のあり方が求められている。

 観光に隣接する業界の立場から連載させていただく機会をいただいた観光経済新聞社と、最後までお付き合いいただいた読者の皆さまに深く感謝申し上げる。

 バス業界、とりわけその主流である路線バス事業は、輸送人員減少により大きな危機にある。しかし、旅行の個人シフトにより、観光需要を取り込むチャンスが向こうからやってくるのだから大変幸運な業界でもある。

 そのチャンスを自らの手でつかむことで、いつの間にかなくしてしまっていた自信を、バス業界が取り戻すことができることを心から願っている。ツーリズム産業の皆さまには、バス業界への変わらぬ支援をお願いするしだいである。

(高速バスマーケティング研究所代表)

 
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