本題から少し離れるが、バス営業所で「管理者」や「事務所」と呼ばれる職種というのは難しい立場だ。営業所長や副所長といった管理職クラスのほか、「操車」とか「運管」などと呼ばれる主任クラスが相当する。
所属が200台、300人といった大規模営業所の所長ともなれば「一国一城の主」だが、そのような特殊な例を除くと、日常業務において彼らは運行管理者として乗務員と向き合う。
運行管理の国家資格を保有しており、各乗務員の運転時間などを法令や労使協定の枠内に収まるよう配慮しながら、勤務シフトの作成や運行指示を行う。
出入庫時にはアルコールチェックなど「点呼」を実施し、渋滞などで遅延が発生すれば運行ダイヤを差し替え、車両故障があれば代車の手配など素早く対応するなど、オペレーション上の責任者だ。さらに、病欠が発生した際の勤務シフトの「穴埋め」、乗客からの電話対応と業務の範囲は幅広い。
一方、各乗務員のモチベーション管理を行いながら、前述のように人事評価も担当するという意味では、乗務員に対して管理職(上司)としての役割も持つともいえる。しかし、社内において、管理職(上司)としての教育を十分に受けているとは言えないケースも多い。
ただでさえ、運行管理をする側とされる側の信頼関係は重要だ。
管理者側の立場からみれば、病欠者が出た際に急に残業を依頼するなど「無理を聞いてもらう」ことが多い一方、規律を守らせ、事故や苦情が当の乗務員に責任があるならば厳粛に対応するなど厳しく接することも求められる。
それにもかかわらず、現業部門に位置付けられる彼らの人事や教育は「現場任せ」となる例が多い。営業所長ら管理職としての役職を持つクラスはもちろんのこと、主任クラスの運行管理者に対しても、準・管理職として育成する必要がある。
ましてや、「ドラレコ」動画を彼らがチェックし人事評価に活用するのであれば、「人を評価する立場」としての十分な教育が必須であろう。
(高速バスマーケティング研究所代表)