遅ればせながら、先日、映画「若おかみは小学生!」を見ました。講談社青い鳥文庫で刊行されている原作シリーズは読んでいましたが、アニメーション映画になると、印象が違っていました。
交通事故で両親を亡くし、家族で唯一生き残った“おっこ”が主人公です。おっこは、祖母が営む花の湯温泉春の屋に引き取られ、祖母の女将、仲居さん、料理長で回す客室数5室の小さな宿で暮らし始めます。かつて女将であるおばあちゃんが着ていた着物をおっこの大きさに仕立て直し、おっこは着物姿で若おかみとして奮闘します。
両親を事故で亡くすという深い悲しみを抱いていますが、春の屋に住み着く幽霊たち、同じく旅館の娘として育つ学校の同級生、個性的な占い師などの出会いで、おっこが優しく、そしてたくましく成長していくストーリー。
映画では「花の湯温泉のお湯は誰も拒まない すべてを受け入れて癒やしてくれる」というキーフレーズがとても感動的におっこの口から語られます。実際、悲しみを背負った子どもを温泉が包む場面は、もう涙なくては見られませんでした。
さすがアニメですね。実写でしたら見ることがつらくなるような壮絶な物語でも、柔らかい絵のタッチとぬくもりが伝わる温泉描写でうまくほのぼのとさせ、登場人物にそっと寄り添う感じが全編に漂っていて、見ていて救われる気持ちになりました。
私が温泉を専門としているのは、どんな人も温めてくれる温泉、温泉は人を選ばずということを混浴温泉を体験して知ったからです。その延長に、現在取り組んでいるバリアフリー温泉があります。そういった点で、この映画には強く共感しました。
そして私が取り組んでいるバリアフリー温泉に関する話です。
「高齢者、障害者の移動などの円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(平成30年法律第32号)が施行され、宿泊施設におけるバリアフリー情報の提供が努力義務化されることになりました。
こうした状況を踏まえて、観光庁から宿泊施設にかかわるバリアフリー情報を積極的に発信するように、宿泊関係団体に対して依頼文が送られました。
これには私も委員として昨年から参画してきました。会議のたびに、これまで取材で培った情報発信のノウハウを積極的に発言してきました。ようやく実現していきます。
誰もが温泉でくつろいでほしい。
みんなが自由に旅に出てほしい。
心からそう願います。
いまもその思いを伝える本を書いています。
旅館・ホテルの皆さんと共に私も取り組みたいと思っています。困ったことがございましたら、いつでもお声掛け下さいね。
(温泉エッセイスト)