【地方再生・創生論 305】太陽光発電施設に対する規制の必要性 松浪健四郎


 山梨県北杜市に家内の両親が別荘地を購入したので、よく訪れた。加えて合併した北杜市の市長に就任したのが、私の同窓で同級生だった。そんな関係で北杜市をよく知ることになったが、2年ほど前、本欄でも紹介したことを覚えている。田舎暮らしをするのに人気高い自治体、日照時間が長いので太陽光発電に適した自治体であることなどを記述した。

 昨年11月、長崎幸太郎知事が、この北杜市を視察したという。太陽光発電が、再生可能エネルギーとして普及し、現在では国内の電力の7%をカバーするに至っている。そこで長崎知事は、北杜市の太陽光発電の現状を見ておきたいと考えたのであろう。近年、普及した太陽光発電に関する問題点が多々あり、放置できない状況を視察しておきたかったに違いない。環境とエネルギー問題が注目され、与野党共にCO2の排出をゼロにする政策を前面に押し出しているため、太陽光発電に注目しておく必要があろう。

 環境や景観への悪影響は、どんどん進むだけにとどまらず、災害時の土砂崩れの心配も大きい。これでは周辺住民とのトラブルが起こって当然と思われる。美しい景観と空気のきれいな環境を求めて転居してきた人たちからすれば、太陽光発電パネルは見苦しい。山梨県は、議会で規制条例案を提出して成立を目指す。長崎知事は、厳しい人だけに私たちの想像を超す規制で対応すると思われる。

 太陽光発電施設の設置を規制する条例は、今までに90以上の自治体が成立させているが、都道府県では和歌山、岡山、兵庫の3県にとどまる。大きな施設を作る場合、知事への届け出が必要とされている。山梨県では、平成27年からガイドラインを作り、森林法が規定する森林地域は「立地に慎重な検討が必要なエリア」、土砂災害が起きる恐れがある区域は「立地を避けるべきエリア」として指導してきたが、強制力はない(産経新聞)という。

 平成23年に「再生可能エネルギー特別措置法」が成立、翌年から電力を固定価格で電力会社が買い取る制度(FIT)が始まり、全国各地で急増した。荒れた土地を借り、パネルを敷き詰める投資者が全国に暗躍するようになる。規制がぬるく自治体の首長に届け出するだけで設置できたのだ。周囲を囲むだけの柵を造るだけ、監視する人間も不要、当然のごとく投資者が目をつける。

 常識的に考えて日照条件のいいのは南斜面である。森林を保有する地主たちは、業者に負けてしまう。南斜面であるならば、木を切り倒してでも貸すことになる。で、災害に弱い土地となり、周辺の住民の苦情が増える。

 林業が輸入材に押され、商売にならなくなったところへ太陽光発電施設の話が飛び込んでくる。土地の価値も低い斜面、農業もできない土地が金銭を生む。山梨県には、かかる土地が全県にあり、防災面からも条例が必要となっている。

 FITは固定価格で変動もあるが、投資のため高価だった太陽光パネルは輸入品も増えて安価になっている。加えて、パネル設置に関する規程が明確でないのだ。投資する者からすれば、これほど簡便で有益な投資はない。そこで山梨県が本気になって乗り出したのである。「森林地域や土砂災害が起きる恐れがある区域で出力10キロワット以上の施設の新設を原則禁止とする」らしい。これだと県土の約8割に及ぶと産経新聞が伝えている。

 しかも既設の施設も規制するという。全施設に維持管理計画書や定期点検報告書の提出を求めるというから、設置者は発電施設の見回りを義務化されたに等しい。今までは、ほったらかしで問題がなかったのに、見回りが必要となる。また、発電をやめる際には、パネルの放置は許されず、廃棄を確認するため、事業廃止届を提出せねばならなくなる。

 一種の公共事業でありながら、各自治体が条例も作らず、太陽光発電を設置させてきたが、休耕地が増え、再生可能エネルギー問題が重視されるにつれて規制が求められるようになっている。

 
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