「ふるさと納税」の季節がやってきた。とはいっても、会計年度(1~12月)の寄付分が控除される仕組みなので、季節性が本来はない制度である。
秋から暮れにかけて申し込みが集中するのは、年末調整の手続きで年収見通しが立ち、しかも返礼品の多くが生鮮で量も多いため、クリスマスや正月の帰省、団らん、集まりでおいしいものを消費したいという心理が働くからだろう。
かつて、年内配送を逃した悔しさから早めの申し込みを心がけるようになったが、冬の賞与が支給される頃でないと負担感もあるから、どうしても師走に集中する。
寄付金の使途選びも楽しみの一つ。観光振興に類する項目に一票を投じる。申し込みサイトによって異なるが、自由記述のコメント欄があったほうが個人的にはうれしい。寄付額の多寡にかかわらず首長名で丁寧な礼状が届くと、来年もまた、寄付をしようという気持ちになる。
ふるさと納税は制度導入から来年で15年の節目を迎える。その間、返礼品の価値割合の徹底や地場産品以外の取り扱いについて見直しが図られた。さらに対象を指定自治体に絞るなど、整備も進んだ。人口減にあえぐ地方では歳入増が見込まれたが、首都圏では減収に悩まされるなど一長一短だ。
さて、生まれ育った故郷はもとより、日ごろお世話になっている自治体やご縁をいただいた先へ応援と感謝の気持ちを込めて寄付先を決めるようにしている。選ぶ返礼品は、魚介類や精肉、果物、コメやビールのほか、陶器や工芸品、生活雑貨や家電など、多岐にわたる。
毎年、欠かさないのは、群馬県甘楽町のこんにゃく詰め合わせ。小幡に2014年に開業した「こんにゃくパーク」が出荷元だ。冬の風物詩・おでんや煮物、すき焼きに欠かすことができないこんにゃくは、安くて日持ちがよいのだが、重いので自宅配送が助かる。
ほかにも、コルノマカロニのパスタセットを重宝している。幼いころにスーパーや給食室で見覚えがあるパッケージで不思議に思っていたところ、製造工場は甘楽町で、本社は自分が育った東京・練馬と初めて知った。
甘楽町は、筆者主宰の「NPO法人交流・暮らしネット」で一緒に活動する理事の出身地で、そのご縁で茂原荘一町長には大変お世話になってきた。
「甘楽町を勝手に応援する夕べ」と題して交流会を開催し、訪問を繰り返してきたが、ここ数年、コロナ禍で往来もままならなかった。そうしたとき、ささやかな支援としての「ふるさと納税」に助けられたように感じる。
コロナも落ち着いてきた。町長の在任中にまた、甘楽町を訪ね、聖徳銘醸の「甘楽niひとめぼれ」で一献願いたいと考えている。
自治体のなかには、「観光客が来なくても、ふるさと納税が好調なので」と語る職員がいる。
しかし、それは大きな間違い。返礼品目当ての無機質なつながりではなく、人や土地とのご縁や支援の心があってこその制度でなくてはならない。「金の切れ目は縁の切れ目」という。ふるさと納税を機に、交流人口や関係人口、さらには移住希望者の増大に寄与できる新たな仕組みづくりも、今後は求められてくるものと考えている。
(淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子)