【体験型観光が日本を変える 78】真の成人になるには 藤澤安良


 米国と北朝鮮の首脳会談が厳戒態勢の中、シンガポールで実現した。その様子は世界中に発信された。自己主張の強い意地っ張りの2人が会って話をしただけでもすごいことであるとの評価も否定はしない。しかし、私の個人的な見解だが、方向性や希望的観測が先行して、内容や結果はもう一つ物足りない。歴史的な日となったことは間違いない。核兵器問題や日本にとっての拉致問題など今後の進展を期待したい。

 サッカーのワールドカップが始まった。直前の日本代表監督交代は波紋を投げかけた。その理由は、選手とのコミュニケーションがしっくりいっていないとされた。日大のアメフト部の監督の会見でも、レスリングの強化委員長の会見でも、コミュニケーション不足が原因とするコメントが聞かれた。全てがコミュニケーション不足で片付けられてしまってはいけない。

 それだけ大事なコミュニケーションはなぜうまくいかないのであろうか。指示命令はともすれば一方通行であり、言われた側が納得せず、腹に落ちていないと行動には移らない場合も少なくない。双方向の言い分が交換され、互いの理解の上に成り立つものである。

 ハラスメントの要素があれば、コミュニケーションではない。相手の立場や気持ちをおもんぱかる心を持ち、表現しなければ相手には伝わらない。日経連加盟の企業での社員選考重視点でも、1位は十数年連続で学力でも学歴でもなく、コミュニケーションである。

 成人年齢を18歳に引き下げる法案が参議院で可決され、2022年4月1日から施行となる。16年から施行されている選挙権年齢に合わせた形となる。友達とのやり取りもスマートフォンに頼り、親や教師との会話も少なく、コミュニケーション機会が少ない若者は、ネット以外の生の情報を得る機会が少なく、社会性が身についているとは到底思えない。主権者教育が十分でないまま、2回の国政選挙を終えたが、投票率はいずれも50%を下回る結果となった。成人年齢引き下げは、大きな収入源を持たない高校3年生が借金をするなど、消費トラブル対策も施行への課題となる。今のところ、学校での教科学習ではなく、消費者教育の充実でそれ以外の対策はないという。主権者教育は、自分の身の回り以外の日本社会の構図を学ばなければならない。

 机上学問では机上の空論になる。それは、生きる源となる食料生産現場である農山漁村での労働体験(キャリア教育)が必要になる。消費者教育はキャリア教育に加えて、労働の大変さと重要性を肌で感じる必要がある。経済の視点も重要視される。商店街での就労体験も有効なプログラムである。いずれにしても、別の環境でインストラクターや仲間とのコミュニケーション機会が多い体験教育以外に対応策がなく、学校が自主的に行うはずもない。法律でその教育を義務化することが求められる。高校生の自己破産者を出さぬよう、成人としての生きる力を身につけなければ、真の成人にはなれない。

 
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