【体験型観光が日本を変える 67】活力と教育は体験交流から 藤澤安良


 例年より桜の開花が早まる中、1週間も早く桜の開花宣言があった陽光うららかな奈良県の日本の歴史の始まりの地、飛鳥で第14回全国ほんもの体験フォーラムが24~26日、北海道から沖縄まで約800人が集まり、開催された。地方創生や地域の活性化が叫ばれて久しいが、地方では過疎少子高齢化のうねりは収まらず、都市との格差は広がる一方である。
 政治では、記憶にない、書類がない、やっぱりあった、黒塗りばかりだった、300カ所も改ざんした、誰が指示したのか、誰が実務をしたのか、なぜしたのか、国民の多くは知りたがっている。しかし、責任のなすり合いが続いている。

 昨年から大企業の不祥事も相次いだ。親子の虐待件数が史上最悪の6万5千件を超えた。親が子を守らずして誰が守るのか。「心の貧困」が目立っている。子どもの経済的貧困も7人に1人と深刻である。その「経済的な貧困」も放置できない問題である。

 家庭で親が食事を作らず、子どももその延長線上にある一人暮らしの若者も朝食を食べていない人が多い。コンビニ弁当やインスタント食品、冷凍食品。旅先のホテルの朝食もほとんどが出来合いの業務用。食料自給率(カロリーベース)もついに史上最低の38%。一方で、食料生産を担う農林漁業従事者が減少の一途をたどっており、「食の貧困」が加速している。

 そんな深刻な社会問題を抱えながら、その問題に立ち向かい、切り込めるのは、農山漁村での体験交流型の観光振興に他ならない。全国フォーラムでの公開パネルディスカッションでは、「日本の活力と教育は体験交流から」をテーマに、自治体は体験型観光を中心政策に据えて、人材と財源を投入し、官民一体となって推進していくべきであるなどの議論が展開された。

 農山漁村でのあらゆる体験は学校教育のみならず、企業や組織の人材育成にも極めて有効な教育手法であり、今後この分野での伸びが期待されている。

 増え続ける訪日外国人に関しても、飽和状態にある首都圏や関西圏から、地方への波はひたひたと打ち寄せ始めている。日本の暮らしや食文化など「日本らしさ」が求められており、迷うことはない。今日まで全国各地で推進してきた、農山漁村生活体験(在宅型ホームステイ)や農林業体験などが、そのまま大いに役立つことになる。

 全国フォーラムでは五つの課題別研究分科会に約600人が参加した。コーディネート組織の重要性と自治体の積極的な関与が必要であること▽感動を与えるガイドやインストラクターは、交流コミュニケーション型でなくてはならないこと▽新学習指導要領に加わる「主体的・対話的で深い学び」に対応するべく準備をすること▽体験型観光が企業研修で極めて有効であることと、その拡大手法▽インバウンドの拡大やその受け入れ条件―など、多様な分野での議論が展開された。誰にとっても心高まる有意義な機会となったと確信している。多くの参加者や関係者に感謝したい。

 
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