【体験型観光が日本を変える 62】質の高い旅行を 藤澤安良


 数十年来の強い寒波が居座り、北陸地方に大雪をもたらし、交通まひが起こっている。その寒波の中で始まった韓国での平昌オリンピックでも、厳しい寒さは選手のコンディションづくりに影響を及ぼしている。

 2月7日は北方領土の日である。72年前、ポツダム宣言を受諾し、8月に終戦を迎えたはずのその後9月に入って、当時のソ連がまったく無防備な択捉島に侵攻し、次々と北方四島を占領した。そんな歴史の中で、その時の艦船の何隻かが米国がソ連に貸し出していた軍艦であったことを示す文献が発見された。つまりは、対日参戦は、時期は別として米国の差し金である疑いが濃くなった。地上戦の沖縄も、原爆投下のヒロシマ・ナガサキも当事者が米国であったことは知らない人はいないが、北方領土占領までも米国が関与していたとあれば、戸惑いを隠せない。計略なのか、裏取引なのか、極めて衝撃的な報道があった。そんな複雑な構図にさらに歴史の関心が高まる。

 羽田空港から北方領土国後島が24キロ先にくっきりと浮かぶ町、標津町に向かった。日中も氷点下が続く激寒の北の大地は、一面の銀世界で陽光にきらめいていた。そこは、不幸な歴史の舞台であり、証言者でもある。戦争体験者が存命の間に、その体験談を語っていただき、理解を深める機会が極めて貴重な時期である。

 私は15年間にわたって、当地のガイドインストラクター養成研修を行っており、早くから体験型観光に取り組み、修学旅行をはじめ、サーモンフィッシングなどの多くのお客さまを迎えてきた。鮭の町ならではのイクラづくり体験、新巻づくりなど、他の地域ではできないプログラムが人気である。冬は、オオワシやオジロワシなどの大型野鳥、エゾシカの大群など、動物ウオッチングが楽しめるとあって、写真を撮りたい人もやって来る。さらには、1万年以上前の遺跡群や湿原を巡るスノーシュートレッキングも楽しい。

 北海道の旅館・ホテルや居酒屋であっても、ロシアなどからの輸入食材が少なくない中にあって、品質は世界一とも言えるイクラや、稚貝放流の天然ホタテは絶品であり、他の地域の追随を許さない。北海シマエビ、氷下魚、宗八カレイなどの地元産の魚介類は、地産地消を徹底する昼食として、旅行会社の主催旅行で年間1万食を超えるなど大きな観光資源となっている。

 北海道は当然ながら、標津町も外国人が増えつつある。日本人のように、多くの人が行くからとか、報道されたとか、有名だからとか、世界遺産であるとかないとかではない。先入観はなく、自然と歴史文化に好奇心や興味を持ち、造詣が深い。事の本質を見抜く力があり、内容が濃く感動が大きい旅をしていると感じている。現地情報を自ら探してやって来る。そしてその情報が波及していく。都市に集中している訪日観光客が地方に向かう時が来ている。その動向は、質の高い旅を目指すべき日本人が見習うべきことである。

 
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