【体験型観光が日本を変える 148】中村医師の悲報に触れて 体験教育企画社長 藤澤安良


 日本で季節外れのお花見騒動の間に、アフガニスタンで活躍されていた中村哲医師が銃撃され帰らぬ人となった。

 医師でありながら、自ら建設重機を操り、砂漠に水路を建設し、植物が繁茂し農作物が作れるほどの肥沃(ひよく)な環境までもつくった。アフガニスタンの病気の原因は、水と飢餓に苦しむことであり、貧困から脱する暮らしが不可欠だとして活動されていた。

 以前から時々その報道を見聞きしていたが、誠に残念である。本来は政治の力で行うべきものである。援助金や円借款では解決できないのが理念であり、行動力であり、またノウハウでもある。日本政府にもっと何かできたはずである。

 その日本でも憲法に定める最低限度の生活をする権利が脅かされている。子どもの貧困が拡大しており、出生率は下がり少子化に拍車がかかっている。その対策は急務である。

 過日「子供の貧困対策大綱」が閣議決定され、詳細な実態把握から始めるとのことだが、スピード感が必要である。

 その数少ない10~29歳の若者の33%が、平日1日あたり2時間以上のオンラインゲームをしており、当たり前のことだが、その時間が長い人ほど、学業や仕事、あるいは心身の健康に悪影響を及ぼしているとの調査結果が国の医療機関から発表された。

 以前、WHOで依存症として病気と認定されたゲーム障害について触れたが、その多くは単独の世界で起こっており、人との交流やコミュニケーション機会を喪失しており、引きこもりにもつながっている。

 いくら学力があっても、人とうまくやれない人は社会になじめないし、仕事もできないし、働こうともしない。勤労の義務は果たせていないことになる。人間力を軽んじた学力学歴偏重のゆがみでもある。人間力を養えるのは、政治家にも学者や有識者と言われている人や教員にも多くはいない。

 巧みな言葉だけの研修セミナーでは学べない。人間力は人間力ある人間から学ぶものである。それは、新聞紙上をにぎわしている、利権や私利私欲、顔やメンツ、立場や肩書きのようなものを超え、他人と命を尊重する生きざまが必要である。前述の中村医師のような人物であろう。

 農林水産業に携わる人、伝統工芸や芸術を守り続けて次代につなごうとしている人、全国には学ぶべき人が多い。そんな人から直接学ぶ体験プログラムを全国各地で創っている。いじめや不登校、引きこもりにならない人間力、バーチャルリアリティであるゲームなどに価値を持たないぐらいの「ほんものの体験」が必要である。

 家庭でも学校でも人間力教育はうまくいっていない。修学旅行などでは自然体験や農林漁業体験、あるいは教育民泊などがすでに実施され、その教育効果が高いことが認められている。今こそ、家庭教育でも、学校教育でも、企業研修でも日本の地方や田舎での体験交流プログラムを実施するような制度にしなければならない。さもなければ、日本の未来は危うい。

 環境問題と共に、人間力問題も全国的な運動にしなければならない。

 
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