【令和時代における交通インフラの人材採用11】バスの形態(2)高速バス 女性バス運転手協会代表理事 中嶋美恵


 「高速バス」というとどのようなイメージをお持ちでしょうか。一般的に夜行バスのことを想像される方が多いのですが、実は高速バスの9割は「昼行」で「夜行」は1割に過ぎません。路線数が一番多いのは「東京―大阪便」で、これはほとんど夜行です。

 ちなみに終電を逃した方が利用する、郊外の主要ターミナル駅まで走るバスは「深夜急行バス」と言います。

 高速バスのライバルは新幹線や飛行機ですが、魅力はリーズナブルな料金設定と時間を有効活用できる部分です。例えば、東京―大阪間の場合、新幹線でも飛行機でも往復3万円ほどかかりますし、移動は一般の方が活動している時間帯に限られます。高速バスは往復1万円でおつりがくる場合もあるほどで、LCCであれば料金はさほど差がないと言えるでしょう。しかし、夜間に移動し目的地に早朝到着する高速バスは、1日をフルに使えるというメリットがあり、時間の節約につながります。

 かつては男性サラリーマンや男子学生が乗客の主流でしたが、現在は顧客層が変化してきています。

 まず、女性客が格段に増えました。これは、女性客を取り込むために各バス事業者が創意工夫を凝らした結果です。例えば、女性専用車両や女性専用スペースを設けたバスが登場したり、女性向けの座席シートも作られました。寝顔を他人に見られないように覆いが下りてくる、化粧直しがしやすいように座席に鏡が設置されている、などで、ピンクやオレンジなど女性がリラックスしやすいシートカラーが採用されています。また、女性向けアメニティや美容にいいドリンクが用意されていたり、アロマが香るバスというのもあります。

 さらに、最近ではシニアの利用も増加しています。定年でリタイアされたご夫婦がフルムーン旅行に高速バスを利用するシーンも増えてきています。これは、バスシートが改良され、長時間乗っても疲れにくくなったのも理由の一つと言えます。

 近頃、訪日外国人観光客は団体旅行から「FIT」個人旅行にシフトしていますので、高速バスの需要は日増しに高まっています。バス事業者各社は、バス運転手をしっかりと確保し、増便や臨時便をうまく出せるかどうかが、ビジネスチャンスをつかむ大きな要因となっていると言っても過言ではありません。

 (リッツMC代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事)

 
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