3月29日、羽田空港国際線の新規就航セレモニーラッシュとなる1日だった。東京オリンピック・パラリンピックへ向け、一部時間帯における都心上空飛行が解禁されたことで、日中時間帯の国際線発着枠が1日50便(往復)拡大され、本来であればこの時期にテレビや雑誌などで羽田空港が大々的に取り上げられる予定だった。しかし今回、新型コロナウイルスの影響(特に入国制限による影響が大きい)で、国際線の大半の便が運航できないことから、静かな門出になってしまった。新型コロナウイルスが沈静化した後、遠くない時期に50便が拡大されて多くの人でにぎわう羽田空港の姿を待ちたいと思う。
今回の発着枠拡大では特にアメリカ行きは約半分の24枠が配分され、日系航空会社、米系航空会社共に多くの便が成田から移管や増便などを決定した。JAL(日本航空)はアメリカの限られた発着枠の関係で一時運休となっていたホノルル便を復活したほか、旧ノースウエスト航空時代から成田に多くの飛行機が駐機するなど成田のイメージが強かったデルタ航空が東京発着便を全便羽田発着に変更するという衝撃的なニュースもあったほか、フィンランド、デンマーク、トルコ、イタリア、インドなどへ羽田発着便が新設されるほか、オーストラリア便は現在の2便から6便に増え、日本初就航となるヴァージン・オーストラリアは羽田―ブリスベン線に就航する予定となっていた。
アウトバウンド・インバウンドの両方にメリットがある羽田からの新国際線ネットワークになる予定だったが、当分はわずかな運航継続便のみとなり、正常な状態に戻るまでは相当な時間がかかりそうだ。
ANA(全日本空輸)でも、各国が入国制限を開始したことで新規就航路線の延期や増便の一時見合わせなどの影響が出ているが、予定通りに3月29日から大半のANA国際線の便が国内線と同じ第2ターミナル発着に変更された。第2ターミナルには新たに出入国機能が完備されたほか、レストランや物販店、免税店、さらには日本最大級の広さを誇る自社ラウンジもオープン。国内線と国際線が同じターミナル内にあることで、特に国内線から国際線への乗り継ぎもスムーズとなり、同じターミナル内では最低乗継時間50分で乗り換え可能となった。
第2ターミナルからも国際線が発着することに伴い、従来の国際線ターミナルが第3ターミナルに名称変更された。各国政府による入国制限、出国制限が続く状況で、制限が解除されるタイミングがいつになるのか先が読めない日々がしばらくは続きそうだ。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)