台風15号は特に千葉県内に大きな被害が出た。特に停電や倒木などの影響で都心と成田空港を結ぶ交通アクセスが麻痺(まひ)し、JR、京成(京成本線、成田スカイアクセス線)が不通となり、さらに東関東自動車道も通行止めになった。成田空港自体は、飛行機の離着陸が可能だったことで、9日の朝に成田空港に到着した到着客の多くが空港内に足止めとなった。
日本人も大変だったが、それ以上に外国人観光客の多くはなかなか情報を把握することができず、夜になってから成田スカイアクセス線が復旧したものの、9日中に成田空港から脱出できなかった外国人も多く、空港で一晩過ごした人も続出した。
今回、鉄道の運休と高速道路の通行止めで完全に都心への交通アクセスが遮断され、都心から70キロ近く離れていることから、一般道の利用では5時間以上の時間を要してしまっていた。それ以前に成田空港ではタクシーを確保することすら難しかったようだ。
しかしながら、夜になって圏央道の通行止めが解除されたことにより、成田空港から圏央道を利用し、つくばジャンクション経由の常磐道というルートができたことで一部の高速バスの運行ができた点はリスク管理の部分では評価できた点と言っていいだろう。
鉄道の部分でいえば、成田駅まで出られれば京成電鉄が動いていたことがあると共に、ホテルの数も多いことから成田駅までのバスを多く運行してほしかったという声が多かった。まずは空港から脱出することを最優先に成田空港と成田駅間だけでもピストン輸送できるようにしておくことも必要だろうと思う。
天気が回復しているのに全く空港内から脱出できない状態になり、まさしく陸の孤島になってしまったということだ。10月末からは成田空港の運用時間が現在の23時から24時まで延長されることに伴い、ようやく鉄道、バス共に深夜時間帯の交通アクセスが整備される。
しかしながら、2011年の東日本大震災の際の教訓が今回の台風に生かされた点は限定的であり、1万人以上の人が空港に寝泊まりする状況を作ってしまったことは反省すべき点でもある。まさしく都心から離れている空港である成田空港におけるリスク事項であり、もしこれが来年の東京オリンピック・パラリンピック中に起きてしまったらと考えると怖い。
今回、飛行機が飛んでいたことで成田空港から中部空港や伊丹空港へ飛行機で飛び、新幹線で東京に戻る人や、常磐線の我孫子駅や取手駅からタクシーで成田空港へ向かった賢い人もいた。災害時のアクセス方法を再検証する必要性を改めて考える機会になってほしい。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)