ゴールデンウイーク(GW)が終わってから1カ月になるが、懸念されていた新型コロナウイルスの新規感染者数もGW明けに急増することなく、東京都でも減少傾向に転じている。GW明けに感染者数が増えてしまうと夏休み前の旅行需要が減る懸念はあったが、GW明けの国内移動の傾向を見ていると、4月にはあまり見られなかったシニア層が国内旅行に出掛けている光景を見る機会が増えた。
私自身、5月22日からの1週間で、大分県、京都府、富山県、山形県を訪れたが、最初に訪れた大分の別府は温泉を目当てに、シニア客が中心の観光バスの姿が見られた。そして京都においても平日ということもあり、若者や社会人の旅行者の姿は限られていたが、午前8時過ぎに宿泊しているホテルで朝食を食べていたときも私の席の周りの多くがシニア層で、朝食を食べてからゆっくり観光へ出掛ける感じであった。
一番驚いたのが、富山県の魚津市での仕事が終わり、黒部宇奈月温泉駅から東京へ戻る北陸新幹線と山形県の米沢市での仕事が終わってから米沢駅から山形新幹線「つばさ」で同じく東京へ戻る夕方の新幹線に乗ったが、どちらも新幹線車内はシニア層が多く乗車しており、お土産を持ちながら東京へ戻る光景があった。同様に国内線の飛行機においても、GW明けからはシニア層の姿が多く見られるようになっている。
その要因としては、シニア層の重症化率、死亡率が低下していることに加えて、ワクチン3回目接種が進み、さらに海外から日本入国時の水際対策の緩和など、旅行に出掛けることができる環境整備が続いていることも要因だろう。6月10日からパッケージツアーに限定されるが、海外からの外国人観光客の入国が認められることになり外国人観光客の受け入れが限定的に再開されるが、コロナ前の日本の観光地の平日需要を支えていたのは、インバウンド(訪日外国人観光客)とシニア層であり、本格的なインバウンド復活は、個人旅行での入国を認め、さらにビザなしでの入国再開および日本へ向かう際に日本行きの便出発72時間以内に必要なPCR検査が不要にならないと厳しい。そういった意味でもシニア層の国内旅行再開の動きは平日の観光地にはプラスになる。
6月は引き続き、「県民割」「ブロック割」が継続されることになった。全国での「Go Toトラベル」が再開されれば、夏休み前の閑散期の旅行需要の喚起につながることになったが、6月も再開されないのは残念だが7月のGo To再開を期待したい。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)