2020年最大のトピックスは、何と言っても「東京2020オリンピック・パラリンピック」だ。期間中(オリンピック7月24日~8月9日、パラリンピック8月25日~9月6日)は会場となる東京や北海道を中心に観戦客などの移動が増えると見込まれるが、国内全体の旅行にはどんな影響を与えるのか。大手の旅行会社やOTAに聞いたところ、期間中の販売は前年と比較して「やや落ち込む」ものの、中長期的視点で見ると「国内旅行にとってプラス材料」と捉えている。
アンケートを旅行会社5社、OTA2社の計7社に実施。開催期間中の国内旅行販売の見込みについて、前年よりも(1)大きく伸びる(2)やや伸びる(3)前年並み(4)やや落ち込む(5)大きく落ち込む―の五つから回答を求めた。その結果、「やや落ち込む」が57.1%(4社)と最も多かった。以下、「やや伸びる」28.6%(2社)、「前年並み」14.3%(1社)の順で、「大きく伸びる」「大きく落ち込む」の回答はゼロ。
やや落ち込むと回答したJTBは、「過去の大会の例を見ても、開催期間に旅行需要が低下する傾向が見られた。大会期間を中心に一時的に国内需要はやや抑制される可能性がある」と予測する。「テレビ観戦需要が増え、旅行の出控えが起こる可能性がある。ボリュームゾーンである東京・TDR関連のツアー商品の買い控えも懸念される」と語るのはKNT―CTホールディングス。
じゃらんnetは「開催期間中は、東京を中心に競技観戦者や関係者で混雑し、宿泊施設、航空券の単価上昇、交通機関の混雑や規制などが想定される。一般旅行者に関しては、旅行の手配が困難であったり、旅行単価上昇、混雑や規制による動きにくさを懸念し、特に東京近郊を目的地とした旅行は抑制される可能性がある」と話す。
一方、東武トップツアーズは、「法人は、オフィシャル旅行サービスパートナーとしての販売を強化しているので大きく伸びる。個人旅行は、通常の国内旅行はやや落ち込むが、観戦ツアー販売の効果で前年並み」と予測し、全体的にはやや伸びると判断した。楽天トラベルもやや伸びると回答したが、「新型コロナウイルスなどの影響もあり予測は難しい」という。
東京オリパラの開催期間中は、国内全体の旅行需要は低調という見方が大半だ。だが、大会終了後は「例えば9月の4連休がきっかけになるなど、秋の行楽シーズンに向けて需要は徐々に回復するのではないか」とJTBでは見込んでいる。
では、東京オリパラは国内旅行にとって「プラス材料」なのか、はたまた「マイナス材料」なのか。「どちらとも言えない」を加えた、三つの選択肢から聞いた。
結果は、プラス材料が71.4%(5社)と最多だった。エイチ・アイ・エスは「国内の移動を喚起する機会としては全般的にはプラスにつながる。観戦チケットを持つ人が各地から東京や札幌へ移動することで、日本各地を知る機会となり、今後の旅行需要を生み出す効果がある」という。
KNT―CTホールディングスは「大会期間中は一時的に国内旅行需要の落ち込みが懸念されるものの、オリンピック開催により東京を中心とした新たな観光スポットの開発が進んだり、食や文化などのさまざまな情報が発信されることにより、中長期的には国内旅行にプラスとなる」と判断している。
日本旅行だけが「訪日客が当該期間に集中するという報道が多く発生した場合は、国内旅行客が旅行を手控える可能性がある」という理由で、マイナス材料と回答。だが、中長期的にはプラス材料と付け加え、「国際的なスポーツ競技によって全世界的に日本の旅行価値が浸透し、競技終了後も海外からの訪日旅行客がさらに力強く成長する可能性がある。訪日旅行客が国内各エリアにとってさらに重要な顧客層になれば、そのニーズに応えるため観光コンテンツの磨き上げが進む。国内旅行マーケットにも貢献する」と捉えている。
どちらとも言えないという楽天トラベルは「東京オリパラの期間は限られており、その後も継続的に国内旅行を盛り上げていくための取り組みが重要」と指摘している。
各社の中でもJTB、KNT―CTホールディングス、東武トップツアーズの3社は、東京オリパラのオフィシャルパートナーであり、特に販売に力を入れている。
日本の魅力を全世界に発信できる東京オリパラは、7月24日の開会式まであと5カ月。新型コロナウイルスによる肺炎が終息し、世界各国から人が集まり、大いに盛り上がることを期待したい。