前回、都道府県別に地域への観光客来訪に対して懸念を表明する人の割合を調査した結果をご紹介しました。調査の結果は、国内観光客の地域への来訪に懸念を表明する人の割合が、全国平均で33.3%であり、また外国人観光客については、同35.8%という結果でした。地域によって観光客受け入れ懸念表明割合は異なり、また総じて国内観光客より外国人観光客に対する懸念表明割合が高いという結果でした。懸念表明割合が高い地域では、約半数の人が懸念しているという結果でした。
今回は、さらにどのような取り組みがあれば、観光客再来訪に対し地域からの理解が得られるのか調査した結果をご紹介したいと思います(外国人観光客再来訪に対して懸念表明をした人200名に対するインターネットアンケート調査結果、2021年9月、弊社実施)。以下調査では、様々な取り組みを宿泊施設が行っている場合、さらに観光関連企業も同様に行っている場合を想定して調査を行いました。
調査の結果、宿泊施設の感染症対策をはじめ、様々な取り組みを組み合わせることで、地域に安心を与え、観光再開に対する懸念表明割合を低下させる可能性があることが分かりました。宿泊施設だけではなく、観光関連企業を含めた取り組みを行うことで高い効果が期待できるものの、宿泊施設だけでも、大きな効果が期待できることが窺えます。観光客再来訪に対する懸念表明を翻意する割合について、宿泊施設による①感染症対策の徹底の場合の翻意割合が20%、②地域の歴史や文化、しきたり等慣習に関する情報の提供が同18%、③地域の安全安心に徹底して貢献しようと取り組んでいるが同17.5%、自然環境保全の取り組みが同12.5%と合計すると懸念表明からの翻意割合で68%となります。さらに宿泊施設と観光関連企業全体として①の取り組みを行っていると、翻意割合21%、②の取り組みを行っていると、同17.5%、③の取り組みを行っていると、同20.5%、④の取り組みでは、同12.5%という結果でした。特に③の地域の安全安心に徹底して貢献しようと取り組んでいるについては、宿泊施設と観光関連企業が共同して行うことが高い効果が期待できます。
以上の調査の結果、宿泊施設による感染症拡大防止対策の徹底は、顧客の安全安心のためだけではなく、観光客再来訪を懸念する地域に対する取り組みとしても非常に重要であることが窺えます。さらに、自然環境保全の取り組みや、様々な地域情報を顧客に提供すること、さらに、地域における感染拡大防止対策の周知徹底が、今後の観光再開に向けた取り組みを併せて実施することが、地域住民の観光客再来訪に対する懸念表明割合を低下させることがありそうです。
一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史