【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み56】観光客再来訪に対する地域の意識調査 北村剛史


北村

北村氏

 世界のワクチン接種回数は2021年9月10日時点で56億回を超えました。2021年5月頃までワクチン接種回数の上昇に伴いパンデミック収束の兆しがみられていたものの、その後デルタ株の流行からパンデミック収束気配が遠のき、国内でも多くの地域で緊急事態宣言が延長されることとなりました。ただし、世界の新規感染者数では8月26日以降、デルタ株流行から初めて減少傾向を示し始めました。その他変異株の脅威はあるものの、ワクチンの効果も、体内での抗体の量を示す抗体価は低下することが報告されたものの、感染防御力自体は依然として認められている他、抗体カクテル療法やその他様々な薬剤研究も進んでいます。9月30日に国内緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除されれば、観光再開が期待され、観光市場の正常化に向けた準備を徐々に進める段階にあるものと考えられます。観光に行きたいという人の割合は、ワクチンを2回接種した人で70.5%、1回接種した人で69.5%、希望しているが接種できていない人で65.5%、ワクチン接種を希望しない人で51.0%という結果でした。一方で、観光を受け入れる側の地域住民の観光受け入れはどうでしょうか。

 そこで筆者企業で、全国の男女10,000名に対するインターネットアンケート調査を実施し、都道府県別に地域への観光客来訪に対して懸念を表明する人の割合を調査しました(全国男女10,000名に対するインターネットアンケートアンケート調査、2021年9月実施)。調査の結果、国内観光客の地域への来訪に懸念を表明する人の割合が、全国平均で33.3%であり、また外国人観光客については、同35.8%という結果でした。

 地域によって観光客受け入れ懸念表明割合は異なり、また総じて国内観光客より外国人観光客に対する懸念表明割合が高いという結果でした。懸念表明割合が高い地域では、約半数の人が懸念しているという結果です。

 また、観光客来訪懸念表明比率について、男女別・年代別で整理しますと特に男性よりも女性に多く、且つ年代が高齢化する程、敏感に反応している様子が窺えます。観光再開及び正常化は我が国経済全体へも大きな影響を与える喫緊の課題であるはずですが、一方で、自身の地域に観光客が来訪することに対して、ウイルスに対する懸念を背景に住民の意向は想像以上に慎重であることが窺えます。これから観光再開に向けた取り組みが活発になるでしょうが、感染症対策の徹底は、顧客だけではなく、地域住民のためにもしっかりと継続する必要があると言えます。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史

 
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