真っ暗な空に灯る柔らかな月の光に、季節の深まりを感じつつ、今年の冬は厳しいのだろうかと考える。やがてくる未来に思いを馳(は)せることは、ありふれた日常の中で、誰もがなにげなく行っていることだろう。だが、過去や未来に思いを馳せるほどに、「今、この瞬間」にどれほどの思いをもって臨むことができているのかと自身を顧みた。
先日、米国でホームステイをした中学生による報告会で、「幸せそうに働く人を見て、文化の違いに感激した」との発言があり、深く考えさせられた。働くことと幸せという言葉が対立軸にあり、しかも文化の違いによるものと感じたようだ。
学生時代の方が、「いま」の努力がどう未来につながっていくのかが、社会人と比較すると分かりやすいと推察するが、その先に描くのが辛い未来になっていないか。身近な例としての自分は、どんな姿を見せることができるのだろう。よりよい未来を子供たちに引き継ぐためにと、信じる道を進んできた自分は、いつまでたってもつかめない未来を追いかけ続けていることに気がついた。今この瞬間が未来を創っているのに、切り離して、今をないがしろにしている。
中学生の頃、年間標語に“Seize the day~今日一日を大切に生きよう~”と掲げられていたが、今になってその意味をかみしめる。日に新たに、未来を見据えながらも、「いま」を起点にいかに幸せに生きて未来につなげていくか。人材育成、後継者不足など相手ありきのことで、どこか手の届かない課題のように感じていたが、できることはある。目の前の方を笑顔にできるよう、自分を役立てたいという思いだけでなく、まずは自分自身が心から笑顔になれるよう、先送りせずあらゆることに今、取り組もう。
何を目指していけばいいのか分からなくなってしまうことがあったとき、夜空に月を見つけるように、見続けていたい光に私もなっていきたい。
(NPO・シニアマイスターネットワーク会員 山梨県観光部国際観光交流課 浅川りえ子)