今回のコラムでは、ホテル・旅館運営における「レピュテーションマネジメント」の重要性について述べたい。
ホテル・旅館を取り巻く市場は、国内旅行の個人化、訪日外国人旅行者の急増とともに、予約経路としてオンライントラベルエージェント(以下、OTA)の需要が年々高まっている。顧客はOTAサイトからさまざまな情報を収集して、利用意思決定の材料としている。
情報にあふれる国内市場の中で、顧客から選ばれるために重要になるのがOTAを主とする「クチコミ評価」である。海外での調査結果(*参照)となるが、2017年3月に発表されたコーネル大学とREVIEW PROの調査によると、ホテルの100点レビュー・グローバル・レビュー・インデックス(GRI)における1ポイントの上昇が、ADR=0.89%、稼働率=0.54%、RevPAR=1.42%の上昇につながるという結果が公表されている。この結果はOTA利用者の顧客満足度スコアとホテルの財務実績との関連性を証明するもので、潜在顧客が利用を検討する施設のクチコミ評価を利用意思決定の判断材料としていることが分かる。
レピュテーションマネジメントは、クチコミ評価を定量的、定性的に分析し、客室、サービス、施設などカテゴリー別の評価に対して改善を図ることで顧客評価を高め、顧客創造へとつなげるマネジメント手法である。マネジメントを実践するにあたり、ホテル・旅館の「あるべき姿」と「現状」のギャップを確認し、業務プロセスやサービスクオリティを高めていくことが重要である。
上記のように、クチコミ評価が経営に与えるインパクトが注目され、これまでのような財務数値に表される業績(定量データ)だけではなく、財務以外の経営状況や経営品質(定性データ)から経営を評価し、バランスのとれた業績を評価するマネジメントをすることが今の時代に求められていると感じている。
(*参照)https://www.reviewpro.com/blog/relationship-higher-review-scores-net-revpar/
(NPO・シニアマイスターネットワーク オリックス不動産株式会社運営事業本部運営部第二課課長、岩佐寛之)