【コロナ禍を乗り越える 宿経営サバイバル塾 20】幾多の試練を乗り越えて 全旅連ポストコロナ調査研究委員会


 3月6日で福島県全域へのまん延防止等重点措置が解除となった。長いトンネルからやっと抜け出たようだ。3月末からは県民割プラスが再開され、4月からは東北ブロック割も始まる。しかし、まずは春分の日の連休だ。皆、期待に胸を膨らませているところに、揺れが来た。一瞬、11年前のことが脳裏をよぎった。

 16日の福島県沖地震は県内全域に被害をもたらした。宿泊施設では、震源地に近い相双地区、内陸部の飯坂、岳温泉、矢吹、白河などが大きく被災した。沿岸部の相馬市松川浦地区も甚大な被害を受けた。通りの所々に亀裂やゆがみが生じている。建物の外壁は大丈夫そうに見えても、内部は、部屋、通路、浴室、階段、至る所、天井は落ち、壁は倒れ、見るに堪えない惨状だ。

 昨年2月の福島県沖地震の被害を、グループ補助金で修復し、昨年からの新型コロナ禍を経て、ようやく営業にこぎ着けて間もない宿もある。今回もグループ補助金は適用されるが、大部分の宿は修復のめども立たず、当分は営業不可能だ。

 県民割やGo Toトラベルキャンペーンの恩恵も受けられず、4分の1の自己負担分に関しても支援を求めざるを得ない。また、補助金は被災前の状態に戻すという原状回復が条件で、追加の耐震補強ができなければ、同規模の地震で再び被災する。地震保険は修繕費に充当されるため、収入が途絶え、日々の生活費も困窮してくる。加えて、補助金は工事を終了し費用を支払ってからの入金となるから、新型コロナ特別融資金の元金返済も徐々に開始される状況下で、さらにつなぎ融資が可能なのか。

 東日本大震災と原発事故以降、地震・津波・原発・風評の四重苦の中、廃炉、除染、中間貯蔵施設、汚染水保管タンク問題など、幾多の試練を乗り越え、復興に取り組んできた。

 結果、松川浦の地域経済は順調に回復してきた。その自負もあり、地震、台風、豪雨などの天災に見舞われても、コロナ禍中も、仲間で力を合わせ、柔軟かつ前向きに行動し、幾多の困難を克服してきた。しかしながら、今回はさすがに立ち上がる気力が失せ、営業の断念を考えた者もいる。あまりに酷い状況に、現実と思えなくて、逆に笑ってしまったけれども、そう簡単にはくじけてはいられない、と、リーダーの管野組合長は満面の笑みで力強く話してくれた。

 旅館の若旦那たちで組織する松川浦ガイドの会はしたたかだ。震災10年となる昨年、復興のシンボルとして松川浦の名物「浜焼き」を復活させた。いまだ営業再開も見通せないが、ピンチを打破すべく、29日から5月8日までの10日間、販売し、街に活気を取り戻す。

 場所は、松川浦地区の旅館いさみや駐車場(相馬市尾浜字船越92の1)。時間は午前10時から午後3時まで、品物がなくなり次第終了する。このコラム掲載が間に合えば、ぜひ、現地に足をお運びいただきたい。

 問い合わせは、相馬市観光協会TEL0244(35)3300。

 (担当副会長・小井戸英典=福島県いわき市・旅館こいと)
       

 
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